(3)都市計画の推進 イ 都市計画決定の状況等  都市計画は、都市の発展を計画的に誘導し、秩序ある市街地の形成を図ることにより、市民の健康で文化的な生活と、機能的な活動を確保することを基本として定められる土地利用、都市施設、市街地開発事業等の計画であり、平成10年度末における都市計画の決定状況は以下の通りである。  まず、一体の都市として総合的に整備、開発及び保全が必要な区域である都市計画区域の指定状況は、表2-V-3のとおりである。  都市計画区域は、既に市街地を形成している区域及び概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域である市街化区域と、市街化を抑制すべき区域である市街化調整区域に区分されており、その決定状況は表2-V-4のとおりである。  地域地区は、住居、商業、工業その他の用途を適正に配分し、都市における土地利用計画を実現するために定められるものであり、用途地域をはじめとして、特別用途地区、高層住居誘導地区、高度利用地区、特定街区、臨港地区、生産緑地地区、風致地区等の種類があり、そのうち用途地域の決定状況は表2-V-5のとおりである。  都市計画には、当該都市に必要な道路、公園、下水道等の都市施設が定められており、都市施設の計画決定及び事業の実施状況は表2-V-6のとおりである。  市街地開発事業は、都市における面的整備事業であり、土地区画整理事業、新住宅市街地開発事業、工業団地造成事業、市街地再開発事業、新都市基盤整備事業及び住宅街区整備事業があり、その決定状況は表2-V-7のとおりである。  地区計画等は、それぞれ地区の特性に応じたきめ細かなまちづくりの手段である。地区計画等の決定状況は表2-V-8のとおりである。 ロ 線引きの機動的な見直しの推進  市街化区域と市街化調整区域に関する都市計画(いわゆる線引き)については、無秩序な市街化の防止に大きく寄与してきたところであるが、他方で、住宅宅地需要等に対応して計画的な市街地形成を図る見地から、定期的な線引き見直しの実施を推進している。その際、今後概ね10年間の市街化区域拡大の大枠として将来人口フレームを位置付けた上、この枠内で計画的な整備の見通しのたった区域と随時市街化区域に編入できる保留人口フレームを活用し、線引きの機動的な見直しを図っている。なお、第3回の定期見直し(平成2年5月から平成8年6月)では、平成11年3月末現在で、全国で4万haの市街化区域が拡大され表2-V-9、現在、平成9年3月より第4回の定期見直しを実施しているところである。  制度面の改善としては、主として地方都市の実情に応じた弾力的な見直しを推進するため、農林水産省と調整の上、平成8年7月に市街化区域の設定に係る運用基準の弾力化を行うとともに、平成9年3月には市街化調整区域内の既存集落における開発許可の緩和が可能となる集落地域整備法について、その適用対象地域の要件緩和を行ったところである。  さらに、市街化調整区域においてもきめ細かな計画づくりを市町村が行うことにより、豊かでゆとりある居住環境の整備や個別的開発の積み重ねによるスプロールを防止するため、平成9年11月の緊急経済対策を踏まえ、市街化調整区域における地区計画の策定対象地域を拡大するとともに、地区計画に適合する開発行為を許可対象に追加した。  なお、平成12年の都市計画法及び建築基準法の改正により、線引きするか否かを原則として都道府県が判断できるよう、線引き・開発許可制度の見直しを行っている(詳細は、「2(2)ロ 都市計画制度の見直し」参照)。 ハ 都市の再構築に向けた都市計画制度の展開  今後の都市整備においては、郊外部における新市街地の形成から、既成市街地の再整備に施策の重点を移していくことが必要である。この場合、既成市街地にも様々な状況の地区があることから、各地区の特性に応じ適切な措置を講じ、計画的な再開発の推進、都市機能の更新又は良好な環境の保全等の施策をきめ細かく実施することが重要である。  老朽化した木造建築物が密集し、防災上危険な密集市街地については、緊急に対策を講じる必要があり、このため、平成9年11月に施行された「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」に基づき、「防災再開発促進地区」を整備、開発又は保全の方針に位置づけ、諸施策を総合的に実施するとともに、地区内における延焼防止や一次避難路の確保等を図るため、「防災街区整備地区計画」の策定を推進しているところである。また、人口の空洞化が顕著な大都市の都心地域等においては、土地の高度利用を図りつつ住宅と非住宅の適正な用途配分を回復し、職住近接型の都市構造を推進することが重要である。このため、平成9年6月の都市計画法及び建築基準法の改正に基づき、容積率や斜線制限の緩和により、高層住宅の建設を誘導する「高層住居誘導地区」の指定を推進している。  さらに、歴史的に諸機能の集積が図られてきた都心地域においては、老朽化した建築物の建替えにあわせて、都市機能の更新を適切に誘導することで、諸活動の中枢的な核としての再生を図ることが必要である。このため、平成9年11月の緊急経済対策を踏まえ、高水準の基盤施設が整備済の都心商業地域について、地区の望ましい更新の姿を示した構想に基づき誘導すべき用途を特定した上で、容積率割り増しに当たり、敷地内空地の確保を必須要件としない「機能更新型高度利用地区制度」の指定を推進している。  また、都市の再構築に当たっては、広義の地方分権の趣旨を踏まえつつ、市町村の創意工夫を活かして、地区それぞれの歴史的環境や土地利用の動向等を踏まえて、個性豊かな市街地環境を形成していく視点も重要である。このため、用途地域を補完して地区の特性に応じた特別の目的からなる土地利用を誘導する「特別用途地区」について、法令による種類の限定列挙を廃止し、多様な活用の推進を図っているところである。  さらに、工場跡地等の低・未利用地の有効活用を促進するため、平成11年7月の産業構造転換・雇用対策本部決定を踏まえ、「用途変更先導型再開発地区計画」を導入し、迅速な土地利用転換を推進しているところである。 ニ 緑の基本計画の策定  「緑地の保全及び緑化の推進に関する基本計画(緑の基本計画)」は、都市緑地保全法第2条の2第2項の規定に基づき、住民に最も身近な市町村が、都市における緑地の保全及び緑化の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施するため、都市の緑に関する総合的なマスタープランとして策定するものである。この計画は都市におけるあらゆる緑を対象として、「緑地の保全及び緑化の目標」「緑地の配置の方針に関する事項」「緑地の保全及び緑化の推進のための施策に関する事項」等をその内容として定め、一定の目標の下に都市公園の整備、緑地保全地区の決定等都市計画に基づく施策のみならず、その他の公共施設の緑化や緑化ボランティア活動に至るまでいろいろな施策や取組みを体系的に位置づけることにより官民一体となった取組みや展開を図っていこうとするものであり、策定した計画は、その実効性を高めるために住民等に対し公表することとされている。  都市計画区域を有する全国の市町村のうち、平成10年度末現在で210市区町村で策定が完了している。  平成12年度以降についても、各市町村による、創意工夫を活かした地域の個性あふれる緑の基本計画の策定をより一層推進し、真に豊かさの実感できる都市環境の形成を図ることとしている。 ホ 都市地下空間の利用の推進について  道路交通の円滑化及び機能的な都市活動の確保の観点から、都市の中心市街地等の地区において計画的に地下利用を進めるために、民有地を含めた地下空間の総合的な利用に関する基本計画(地下利用のガイドプラン)の策定を推進する。大都市のターミナル地区や大規模な再開発地区等は、特に計画的に地下利用を進める必要がある地区(地下利用計画地区)として位置付けるとともに地下空間を活用した交通ネットワークの計画策定も併せて推進することとしている。 ヘ 都市計画における地方分権の推進  平成10年5月に閣議決定された「地方分権推進計画」に基づき、平成12年4月1日より施行された「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」において、所要の都市計画法の改正を行った。主な改正点は以下のとおりである。 1)都市計画区域の指定、都市計画の決定等地方公共団体の行う都市計画に関する事務は、原則として自治事務とする。 2)都市計画決定に係る国の認可、都道府県の承認は、同意を必要とする協議とする。 3)都道府県において定める都市計画に対する国の関与、市町村の定める都市計画に対する都道府県の関与に当たっての視点を明確化する。 4)政令指定都市の都市計画の決定権限を拡充する。 5)開発許可等の事務につき、特例市(人口20万人以上の市からの申出に基づき指定)に委譲する。また、都道府県及び政令指定都市に加え、中核市及び特例市にも開発審査会を設置する。 6)市町村に置かれる審議会を法定化し、この議を経れば、都道府県都市計画審議会の議を経ることを不要とする。