(3)ストックの時代における建築物の維持保全 イ 建築物の維持保全の重要性  建築物の維持保全については、近年社会の関心が急速に高まりつつある。これは、主に以下の理由による。 1)昭和40年代を中心とした過去の活発な建築投資により作られた建築物が築後30年近くになり、部材、設備の大規模修繕、交換が必要となる時期にきていること。 2)近年のエレクトロニクスの進歩、情報化社会の形成により建築物の質的向上(高度情報化建築物(インテリジェント・ビル)、OAオフィス等)が強く要求されており、これに対応して適切な改修や設備の更新を実施していく必要があること。 3)確実な点検を必要とする排煙設備等の建築設備や複雑な管理システムをもつ大規模な建築物が増加してきていること。  このような状況は、社会情勢の変化、技術の進歩、居住環境の変化などの多くの要因によって起きているものであり、これらが一体となって、建築物の維持保全の必要性が高まってきているところである。  また、建築物の不適切な維持保全に起因する外壁等の落下事故や火災等の災害を未然に防止するため、建築物の維持保全と防災対策の推進を図っていく必要がある。 ロ 中高層の建築物の再開発の必要性  我が国の都市の中心市街地では、高度経済成長期以降に活発な建築活動により土地利用の高度化が急速に進展したが、昭和30〜40年代までに建築されたマンションを中心とした中高層建築物の老朽化が進行しており、部材や設備の大規模な改修とともに、建替えを含めた更新が大きな課題となってきている。