(3)多様な社会的要請に対応した建築物整備の推進 イ 高齢者・障害者等が円滑に利用できる建築物の整備  21世紀初頭には国民の4人に1人が65歳以上の高齢者となることが予測され、運動機能や知覚機能に制約を持つ国民の割合が増加すると見込まれており、また、障害者は、社会を構成する一員として自立し、社会、経済、文化その他のあらゆる分野に積極的に参加することが望まれている。  このため、今後における建築物の整備は、高齢者・障害者等が、移動及び利用の自由と安全性を確保しつつ、自立した生活を営むことができ、また、社会活動に積極的に参加することができるよう配慮して行われる必要がある。  このため、ハートビル法(高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)において、病院、百貨店、ホテル等の誰もが利用する建築物の建築主に、高齢者、障害者等の方々が利用しやすいように整備する努力義務を課しており、建設大臣が建築主の判断のための基準を策定している。基準のうち、基礎的基準に照らして都道府県知事等が建築主に対し指導、助言等を行うことができるとするとともに、誘導的基準に合致する等の優良な建築計画を都道府県知事等が認定することができるとしている。この他に、高齢者・障害者等の利用に資するより十分なスペース等をとった建築物に対する容積率の建築基準法上の特例が設けられている。ハートビル法に基づき認定を受けた建築物については、補助制度(人にやさしいまちづくり事業)、融資制度(日本政策投資銀行等による人にやさしい建築物整備事業)、税制上の特例(所得税・法人税の割増償却、事業所税の一部非課税)等の支援措置が設けられている。  また、ハートビル法の内容と併せ、「高齢者・身体障害者等の利用を配慮した建築設計標準」を策定、講習会の実施、パンフレットの作成等により、建築主、建築士等への普及に努めている。 ロ 建築物における環境対策の推進 1) 建築物の省エネルギー化の推進  「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」に基づき、建築物における外壁等を通しての熱の損失の防止等の措置に関する建築主の判断基準を示しており、建築主に対する指導・助言を行っている。また、省エネの努力が著しく不足している建築主に対し、建設大臣が指示を行い、正当な理由なく指示に従わなかった場合はその旨を公表できることとなっている。 2) 環境に配慮した建築物の整備促進等の助成策  環境に配慮した建築物(エコビル)の整備を促進する必要があるため、省エネ性能を確保するための適切な措置、水資源の有効利用、雨水の流出抑制又は汚濁負荷の低減のための措置、都市環境の保全・創出への適切な配慮等がなされている建築物の整備に対する低利融資を行っている。  また、省エネ型建築設備については、所得税及び法人税に対する税制上の特例措置が講じられており、日本政策投資銀行等において省エネ型建築物に設置する省エネ建築設備や既存建築物の省エネ改修に導入される設備等に対する低利融資が行われている。  さらにリサイクル資材の活用を推進するため、リサイクル資材を利用した建築物に対する低利融資が行われている。 3) 浄化槽の適正な設置の促進  我が国においては、水洗化人口の約4割が浄化槽に依存しているなど、浄化槽は大きな役割を担っており、下水道整備との調和を図りながら適正な設置を推進していく必要がある。このため、特に、生活排水対策として効果の高い小規模合併処理浄化槽の設置等に対して、住宅金融公庫による割増貸付等の制度を設け当該浄化槽の設置の促進を図っている。また、水質汚濁防止法の特定施設等に該当し、通常より厳しい排水基準が課せられている中規模・大規模の合併処理浄化槽に対しては、固定資産税の課税標準の特例制度が設けられているほか、所得税、法人税の特別償却等の税制上の特例措置が設けられている。一方、近年、公共用水域の水質汚濁の防止や、生活環境の保全に対する社会的要請の高まりの中、海域や湖沼、河川等の公共用水域における富栄養化対策が求められている。とりわけ、内湾、湖沼等の閉鎖性水域における富栄養化を防止するため、生活系排水に含まれる窒素や燐への対応が重要な課題となっており、また、BOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)等についても、より高度な処理が要求されている。  このため、窒素や燐を除去する性能又はBOD若しくはCODについて高度な処理性能を有する屎尿浄化槽の構造基準に基づき、その普及促進を図っているところである。 4) 建築物における特定フロン対策  建築物の空気調和設備の熱源として使用されている特定フロン使用冷凍機の代替、廃棄、維持管理に関するマニュアルを策定すること等により、建築物における特定フロン対策を推進している。 ハ 高度情報化建築物(インテリジェント・ビル)の整備促進  情報化社会に対応した良好な建築ストックとして、高度な情報通信設備や管理制御機能を有するインテリジェント・ビルについて、低利融資や税制上の特例措置を講じることにより、その整備を推進している。 ニ FM(ファシリティ・マネジメント)の推進  建築物に対するニーズの高度化・多様化に対応して、建築物を総合的・戦略的に企画し、運営していく手法として注目されているファシリティ・マネジメントについても、その普及、技術開発、人材の育成等を推進している。 ホ 住生活の多様化への対応(地下室の基準の明確化)  住生活の多様化に対応するため、住宅の地下に居室を設ける場合の基準を明確化することとなっている。