(5)自然と調和した暮らしと環境を創出する治水事業等 イ 人々にうるおいを与える河川環境の整備  環境に配慮した護岸や高水敷等の整備、河川マリーナや河川利用案内標識等の整備、底泥のしゅんせつ、浄化用水の導入、れき間接触酸化式浄化等の河川環境整備事業を実施する。特に著しい水質汚濁が生じている河川等については、清流ルネッサンス21に基づき、流域での発生源対策、下水道整備に加えて水環境整備事業(河川浄化事業)を積極的に推進する。また、琵琶湖等重要湖沼においては、建設省・農林水産省が所管する各種事業を連携して汚濁負荷削減対策を集中的に実施することにより、湖沼の水質保全・環境対策を推進する。さらに、支川からの汚水を分流・浄化する流水保全水路整備事業を推進する。  また、都市内の貴重な自然空間として都市内の河川等のネットワーク化を図るとともに、公園と一体的な河川整備を実施する水と緑のネットワーク整備を下水道事業・都市公園事業と連携して積極的に推進する。  また、平成9年度よりすべての河川を対象に取り組んでいる「自然をいかした川」を引き続き推進するとともに、本来の自然豊かな川を復活させる河川再生事業、まちづくりの核となる良好な水辺空間を創出するふるさとの川整備事業、地域住民の憩いの場を創出する桜づつみモデル事業等を推進する。  さらに、河川環境に関する専門的知識と豊かな川づくりに対する熱意を有する地域住民の参加により、河川環境の整備と保全や情報の把握をきめ細かく行う河川環境保全モニター制度を推進するほか、河川愛護団体と市町村、河川管理者が共同して河川の良好な環境を整備、利用、管理するラブリバー制度、地域住民の積極的な協力により河川管理体制の充実を図る河川愛護モニター制度を推進する。 ロ 自然環境の保全と親水機能の拡大を図るダム周辺での取組み  水源地域の活性化に資するため、ダム貯水池周辺において、緑化対策等を行うダム湖活用環境整備事業、ダム貯水池の水質保全のため、濁水対策及び富栄養化対策を行うダム貯水池水質保全事業、特定貯水池流域整備事業、魚類等の生態系を含む河川環境の改善のため、環境改善放流施設、魚道の設置等を行うダム水環境改善事業を実施する。  また、ダム湖の親水性を向上させるレクリエーション湖面整備ダム事業、レクリエーション施設と一体となったレクリエーション多目的ダム事業を実施する。  さらに、「地域に開かれたダム」として、これまでに石狩川・金山ダム等39ダムを指定した。 ハ 水と緑豊かな渓流空間の創出整備  都市及び都市周辺の渓流において砂防環境整備事業を実施するとともに、周辺環境と比較して渓流の環境が著しく劣っている渓流において渓流再生事業を実施する。中小洪水時等における土砂の流れを妨げず、適切に土砂をコントロールするスーパー暗渠砂防ダム等の施工を推進し良好な渓流環境の保全を図る。また、山腹工や砂防樹林帯をはじめとした自然を活かした渓流づくりを推進する。 ニ 緑豊かな斜面空間の創出  急傾斜地は、特に都市域においては貴重な緑地であるとともに、景観を構成する重要な要素となっている。急傾斜地崩壊対策事業の実施に当たっては、21世紀初頭までに都市域の景観上重要な急傾斜地のうち、安全性に加えて緑豊かな斜面となるよう植樹等のなされた斜面の割合を3割とすることを目標に、安全で緑あふれる斜面対策を重点的に実施している。平成12年度においても樹木を残したまま斜面の安全度を高める「緑の斜面工法」を積極的に導入する等、緑あふれる斜面対策を引き続き推進する。  また、危険な斜面直下に緑地帯を形成することにより、がけ下の危険な箇所への住宅等の立地抑制を図るとともに、緑地の増加が図られる「がけ崩れ緩衝樹林帯」の整備を推進する(図2-VIII-20)。 ホ 自然と共生し、親しまれる海岸  海岸は豊かな自然を有し、国民の利用ニーズも高いため、砂浜を保全・復元することにより、やすらぎとうるおいのある海岸環境の整備を推進する。また、水質及び底質の悪化した海域において、総合的な海域浄化対策を積極的に推進する。  人工リーフなどの沖合施設は、多様な生物の生息・生育の場となり得ることから、自然環境に配慮した整備を進めるとともに、水産庁所管沿岸漁場整備開発事業と海岸事業が連携し、離岸堤と増養殖場の一体的整備等により投資の効率化を図り、水産物の安定供給に資するとともに、海岸の防護による国土の保全を図る。  さらに、生息する動植物等に配慮した自然環境にやさしい海岸の整備手法についての検討も進めていく。 ヘ 美しい山河を守る災害復旧  平成10年度より、「美しい山河を守る災害復旧基本方針」に基づき、河川の災害復旧事業において環境との調和を図ることを推進してきた。平成12年度においては、より一層自然環境に配慮した「川づくり」という観点で、被災河川の災害復旧事業及び改良復旧事業を推進する。  また、地方公共団体においても、この基本方針をもとに、地方の実状に合わせた「美しい山河を守る災害復旧実施方針」を策定し、それぞれの河川の「川らしさ」を尊重した事業を推進することとしている。