IX 良質な官公庁施設の整備 1 現状と課題 (1)良好な官公庁施設の整備のための基本的方針 イ 官庁施設の現状  戦後50年、官庁施設は、人々に親しまれ、公衆の利便、公務能率の増進及び災害の防除を図ることを基本として、それぞれの用途に応じた機能が十分発揮できるように整備が進められてきた。この間、社会情勢の変化、建築技術の進展とともに整備水準の向上が図られ、防災の観点からは、建築構造の非木造化がすすめられ、昭和30年当時16%に過ぎなかった官庁施設の不燃化率(建設省実態調査対象施設における延べ面積比)は、現在で、概ね100%に達している。  また、絶対的に不足していた延べ面積は、官庁施設全体で、約2,400万m2(昭和30年度)から約8,989万m2(平成10年度)へと大幅に増加している。  さらに、官庁施設整備の中心的施策として進めてきた集約・合同化は、昭和28年に完成した中央合同庁舎第1号館以降計画的に進められ、平成10年度末現在、合同庁舎は全国で322施設となり、建設省が実態調査を行っている官庁施設延べ約1,288万m2の約20%を占めるに至っている。  しかし、その一方で、狭あいや、建設後の経年劣化による老朽の著しい施設が増加している。また、社会情勢や国民の生活環境の変化に伴う行政ニーズの多様化・高度化も進行しており、今後の施設整備においては、既存施設の改善等を含めて、これらの問題に的確に対応していく必要がある(図2-IX-1)。 ロ 官公庁施設の整備のための基本的方針  地球環境問題、高齢社会への移行、情報化の進展や防災への意識の高揚等に見られるような社会環境の変化を背景に、国民のニーズも大きく変化してきており、官庁施設の整備についても、国民の視点での機能の多様化、一層の安全性の向上などが求められている。  このため、建設省では、今後の官庁施設の整備に当たっての基本的な方針として、「国家機関の建築物及びその附帯施設の位置、規模及び構造に関する基準」(平成6年12月15日建設省告示第2379号)を制定した。この基準を踏まえ、安全で安心な社会を形成するための震災等に対応する防災対策、高齢者・障害者施策、地球環境保全、さらに、地域と連携した街づくりや景観形成、施設の適正な保全等へ適切に対応していくこととしている。