第3 建設活動の動向、建設産業と不動産業


T 経済情勢と建設活動の状況等

1 平成8年度の我が国経済
 平成8年度の我が国経済は、厳しい雇用情勢が続き、7年秋の経済対策の効果が次第に薄れてきたものの、低金利政策の継続、円高の修正により、緩やかな回復傾向で推移した。この結果、平成8年度実質国内総生産は前年度比+3.0%(速報ベース)と+2.4%であった前年度を上回った。

2 建設活動の状況
 平成8年度の建設投資の状況をみると、名目で前年度比4.1%増の83兆200億円、実質(平成2年度価格)で同3.3%増の78兆4,800億円程度となり、名目、実質とも増加となった。
(1)政府建設投資の動向
 平成8年度の公共事業については、7年度に組まれた2度にわたる補正予算の効果の反動が現れた。また、阪神・淡路大震災の復旧工事は、8年度に入りピークを過ぎて大幅減となった。このため、平成8年度の公共工事着工は前年度比15.0%減となった。
(2)住宅投資の動向
 平成8年度の新設住宅着工戸数は、公庫の融資戸数の追加等の政府の住宅対策が講じられたほか、金利は史上最低水準で推移し、阪神・淡路大震災の復興需要が引き続きみられたことなどから、持家、貸家、給与住宅、分譲住宅とも増加した。この結果総計でも 1,630,378戸となり、第七期住宅建設五箇年計画の計画水準を大幅に上回り好調であった。(前年度比9.8%増)。また、平成8年度の住宅投資は、28兆8,000億円程度で前年度比11.8%の増加となった。
(3)民間非住宅建設投資の動向
 平成8年度の民間非住宅建築の動向を民間非居住用建築物着工床面積でみると、前年度比10.3%増と2年連続の増加となり、5年連続の減少が続いていた工事費予定額でも10兆5,935億円、前年度比7.9%増となった。民間土木工事は、前年度比3.2%減と4年連続の減少となった。

3 地域別建設活動
 平成8年度の地域別建設活動を、建設総合統計による建設投資額でみると、阪神・淡路大震災による復興投資の反動減で近畿は減少したが、その他の地域では増加した。



U 建設産業の動向と施策

1 建設産業を取り巻く環境  我が国の建設産業は、国内総生産の約2割に相当する約80兆円の建設投資を担うとともに、全産業就業人口の1割を超える670万人の就業者を擁す我が国の基幹産業である。また、住宅・社会資本の整備の主要な担い手として、建設産業に対する国民の期待は大きく、果たすべき役割はますます増大しているところである。
 一方、建設産業を取り巻く環境は、公共工事における入札・契約制度の改革やWTO政府調達協定の発効に伴い、今後、建設市場の一層の国際化が見込まれるなど「新しい競争の時代」を迎えている。
 建設産業が、このような「新しい競争の時代」を乗り切り国民の期待に応えていくためには、各企業が、技術力の向上や企業体質の強化、経営基盤の強化を図ることが必要不可欠となっている。

2 建設産業の現状
 建設業許可業者数については、平成8年3月末現在で約55万者であり、過去最高となっている。
 建設業者の経営状況については、売上高経常利益率を見ると、平成2年度は3.4%であったが、平成3年度以降は、低下傾向にあり、平成6年度は2.3%にまで低下している。
 平成8年における建設業の倒産は、件数で3,710件(対前年比98.0%)、負債総額で8,548億円(対前年比111.4%)となっている。(負債総額1,000万円以上の倒産を対象。(株)帝国データバンク調べ)

3 建設労働の動向
 総務庁「労働力調査」によると、平成8年平均の建設業就業者数は670万人で前年より7万人増加し、年平均で過去最高となった。
 また、建設技能者の不足率は、建設省「建設労働需給調査」によると、平成8年平均の調査対象6職種(型枠工(土木・建築)、左官、とび工、鉄筋工(土木・建築))計の不足率は全国で0.6%(前年比0.2ポイント減)、8職種(6職種に電工、配管工を加えたもの)計の不足率は0.5%(前年比0.1ポイント)であり、安定した状態が続いている。

4 建設資材の動向
 主要建設資材の需要量は、平成3年度以降減少を続けてきたが、平成8年度においては、平成7年度補正予算及び民間建築投資の大幅な伸びの効果などにより、平成7年度に引き続きセメント、生コンクリート、普通鋼鋼材等で前年度の需要量を上回るなど、総じて持ち直し傾向が明らかになっている。
 また、価格についても、平成3年度以降減少傾向にあったが、平成8年度のおいては、総じて横ばい傾向で推移している。

5 建設市場の国際化
 我が国の建設市場に係る制度は、従来より内外無差別の原則により運用されており、平成9年3月末日現在、80社の外国法人及び外資系日本法人が建設業の許可を取得し、日本で営業活動を行っている。
 また、建設市場の国際化は世界的に大きな流れとなっており、我が国においては、平成6年1月、「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」(閣議了解)が策定され、外国企業に対して十分に内外無差別かつ開放的となった。
 また、平成8年1月には、日本をはじめ米国、EU、カナダ等22カ国が締約する新たな政府調達協定が発行した。協定は、物品に加え建設、設計、コンサルティング業務等のサービスを対象とし、国及び政府関係機関とともに「行動計画」では勧奨の対象であった都道府県と政令指定都市が適用を受けることとなった。

6 建設機械の現状
 建設機械動向調査によると、国内における主要な建設機械の年間購入台数は、平成2年度から平成5年度まで続いていた減少傾向から平成6年度は増加に転じたが、平成7年度は再び減少した。また平成7年度における国内の主要な建設機械の推定保有台数は、110万台と100万台を大きく越えている。



V 不動産業の動向と施策

1.不動産業の国民経済に占める位置
 我が国の不動産は、その評価額が 2,311兆円であり、国民総資産の32%を占める重要な資産である(経済企画庁「国民経済計算年報」)。このように重要な意味を持つ不動産を供給・管理するのが不動産業であるが、その業態は開発・分譲、流通、賃貸及び管理の大きく4つに分類され、その業務も極めて多岐にわたっている。このうち、開発・分譲及び流通の分野については、宅地建物取引業法に基づく規制の下にあり、免許を受けた宅地建物取引業者数は、平成9年3月末現在 142,094(大臣免許業者 2,254、知事免許業者 139,840)である。

2.不動産業を取り巻く状況の変化
 住宅市場においては、低金利傾向等を背景に、新築分譲マンションの売行きが比較的好調であったが、平成8年秋から低調に推移している。オフィス市場においては、空室率は改善傾向にあるが、新・近・大の物件に需要が集中し、市場が二極化しており、依然先行き不透明な状況にある。
 不動産業の経営状況は長期低迷しているが、低金利等により、借入金依存度の高い不動産業界では平成5年度以降、倒産が減少傾向にある。また、業界全体の経常利益は平成7年まで5年連続マイナスであったが、平成8年にはプラスに転じている。

3.平成8年度、9年度の主要施策
 宅地建物取引業法の一部を改正する法律のうち媒介契約制度及び指定流通機構制度に係る部分が平成9年4月に施行され、新たな指定流通機構制度がスタートした。
 また、土地の有効利用を推進するため、不動産特定共同事業の積極的な活用を図る観点から、事業参加者がいわゆる投資の専門家等である場合に、一般投資家保護のための行為規制の一部を緩和する等の不動産特定共同事業法の一部改正が行われた。同事業は、担保不動産等流動化総合対策(平成9年3月)で提唱された担保土地の流動化にも資することがあると考えられる。