2.不動産市場の活性化

(1)不動産の証券化の推進
 不動産の証券化は、約1,400兆円といわれる個人金融資産を優良な不動産プロジェクトへと振り向け、不動産市場の活性化を促進するとともに、民間資金投入による優良な都市ストックの形成を通じて、日本経済再生に資するものである。
 12年度末現在の不動産証券化の市場規模は、約3兆円弱と推定されるが、13年度末までに新たに1兆数千億円程度拡大し、4兆数千億円規模に達するものと見込まれる。

1)不動産ファンド(不動産投資法人)の組成の推進
 12年11月の投資信託及び投資法人に関する法律、宅地建物取引業法の改正等により不動産ファンドの組成が可能となった。また、13年3月に東京証券取引所において「不動産投資信託証券に関する有価証券上場規程の特例」が制定され、現在2つのファンドが東京証券取引所に上場(いずれも13年9月10日)しているところである。

<不動産ファンド(不動産投資法人)>

 投資法人が、投資証券等を発行して調達した資金を不動産等に投資し、賃料収入等から得られた利益を配当する仕組み。

2)不動産特定共同事業の規制緩和
 不動産特定共同事業については、これまでも規制緩和により最低出資額制限の引き下げ措置を講じてきたが、一層の不動産投資の促進の観点から13年7月に不動産特定共同事業法ガイドラインの一部を改正し、最低出資額制限を撤廃した。同時に、商品単位の低額化により一般投資家による投資の増大が見込まれることから、その保護を徹底するため、不動産特定共同事業法施行規則の一部を改正し、契約成立前における説明義務項目等を拡充した。
 今後、投資家のニーズに対応した様々な特色のある商品が供給され、投資家の資金が優良な都市開発、住宅供給等に活用されることが期待される。

<不動産特定共同事業>

 組合等を通じて投資家から不動産の共有持分や金銭の出資を受け、又は不動産の共有持分の賃貸・賃貸委任を受けた事業者が、当該資産を基に不動産取引を行い、その収益を投資家に分配する事業。平成7年に施行された不動産特定共同事業法に基づく許可業者数は76社(13年12月現在)、商品募集実績は累計で63商品2,983億円(13年12月現在)。

図表II-9-16 不動産特定共同事業の募集額及び累計額の推移
図表II-9-16 不動産特定共同事業の募集額及び累計額の推移



3)不動産投資顧問業の育成
 新たな不動産業としての「投資顧問業」の健全な育成と投資家の保護を図るため、一定水準以上の業務遂行能力を有するものの登録、情報の開示、投資家保護のための一定のルール遵守の義務づけによって、投資家が安心して取引を行える仕組みの確立を目指して、12年9月に不動産投資顧問業登録制度が創設された。
 不動産投資顧問業の育成は13年4月の緊急経済対策にも盛り込まれており、今後標準的な契約書や報酬のあり方を検討することとしている。

<不動産投資顧問業>

 不動産投資に関する助言業務のみを行う一般不動産投資顧問業と、助言業務に加え一任業務を行う総合不動産投資顧問業の2種類がある。平成13年12月31日現在、一般不動産投資顧問業466件、総合不動産投資顧問業13件が登録されている。登録情報はデータベース化されており、国土交通省ホームページからのアクセスが可能である。

4)不動産投資インデックス(注1)
 不動産投資市場の市場環境を整備するため、不動産投資の判断・運用成績の評価の指標として活用できる不動産投資インデックスの整備が求められている。13年4月の緊急経済対策にも、不動産投資インデックスに関するガイドラインを14年までに整備するとされており、13年6月に不動産投資インデックス整備検討会を開催し、不動産投資インデックスに関する検討を推進している。

5)SPC等を利用した開発型スキームの活用
 開発案件について証券の発行や借入などにより調達した資金を当該物件の開発事業そのものに充当するなどの、いわゆる開発型の流動化については、すでに資産の流動化に関する法律(SPC法)に基づくマンション建設や商業施設建設の事例があるが、さらにその活用が期待されている。

6)不動産証券化税制
 13年度税制改正においては、不動産証券化を促進するために特定目的会社(SPC)、投資法人等のスキームが整備されたことから、実物不動産の流動化へのインセンティブを与えるため、一定のSPC、投資信託、投資法人が、一定の不動産を取得した場合の流通税について、軽減措置 (注2)が講じられた。また、13年秋の臨時国会において、長期(1年超)保有上場特定株式等の譲渡所得に係る100万円特別控除の特例の上場不動産投資口については、適用対象に追加されたほか、株式等に係る各種の特例(申告分離課税の税率の軽減、損失の繰越控除、緊急投資優遇)の適用に関し、上場株式と同様に扱うこととされた。
 また、14年度には、不動産特定共同事業契約(匿名組合型)により事業者が取得する一定の不動産に係る流通税の特例措置(注3) が2年間延長されることとなったほか、特定口座内の上場株式等(上場不動産投資口を含む)の譲渡に係る所得計算及び申告不要の特例措置が創設されることとなった。



(注1)用途・地域ごとに、一定期間に不動産から生じる収益を指数化したもの。
(注2)登録免許税の税率1,000分の16、不動産取得税の課税標準3分の2控除、土地の得に係る特別土地保有税非課税。
(注3)登録免許税の税率1,000分の30、不動産取得税の課税標準5分の1控除、土地の取得に係る特別土地保有税非課税。

 

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