第I部 人口の減少、少子高齢化の進展など人口構造の変化に対応した国土交通行政の展開 

(快適で利用しやすい公共交通サービスの提供)

 大都市圏を中心とした激しい通勤通学混雑は緩和が期待される一方、公共交通機関の利用者に占める高齢者の割合は急速に高まることが予想されるため、公共交通の目指すべき方向も、従来の通勤通学輸送等に対応した輸送力の拡大から、バリアフリー対策を始め、高齢者の利用を前提とした乗り継ぎ利便の向上や交通機関のゆとりの確保など誰もが使いやすい交通機関を目指した分野へと政策の重点を移していくことが一層求められる。
 交通事業者によるバリアフリー対策の自主的な取組みを促進させるとともに、公共交通をめぐる経営環境が厳しさを増しているという現実に鑑み、交通事業者に整備のインセンティブが働きにくいものについては、行政としても引き続き重点的に支援していくことが必要である。
 また、事業者間の競争や創意工夫を通じて、都市部の高齢化や職住近接等に対応したきめ細かなバス路線設定や鉄道駅の有効活用、女性や高齢者等による利用を狙ったさまざまなサービスの提供や需要創出型サービスの展開も期待される。
 さらに、人口減少により従来のような輸送需要の増加が見込めない中で、個々の事業者における取組みだけでは限界が生じており、公共交通の利用を促進するためには、さまざまな主体が連携することにより、既存ストックを最大限活用しつつ、そのネットワーク性を向上させることが効果的である。
 このため、ハード面はもちろん、ダイヤや運賃などといったソフト面においても、鉄道相互の連携、鉄道とバスの連携等公共交通機関相互の連携を更に強化するほか、沿線地域とも一体となった取組みにより、シームレス(注)で利便性の高い公共交通体系を形成することが不可欠である。特に、広域ネットワーク内においてこそ機能が発揮しうるICカードの導入は、幅広い連携を通じたネットワーク形成に寄与することが期待される。また、公共交通と自家用交通の連携による利便性の向上を図っていくことも重要である。

 

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