第II部 国土交通行政の動向 

(6)高潮・津波・侵食等対策

1)海岸保全の計画制度の整備
 平成11年に改正された海岸法では、主務大臣が海岸保全基本方針を策定し、それに基づき都道府県知事が海岸保全基本計画を全国71沿岸について策定することとされている。
 12年に策定された海岸保全基本方針を受けて都道府県知事による海岸保全基本計画の策定(14年10月現在9沿岸にて策定済)を推進している。

2)美しく、安全で、いきいきした海岸の創出
 (ア)面的防護方式の推進
 堤防や消波工のみで海岸線を防護する線的防護方式から、沖合施設や砂浜等も組み合わせることにより防護のみならず環境や利用の面からも優れた面的防護方式への転換をより一層推進する。

 
図表II-6-2-7 面的防護方式

堤防や消波工のみで海岸線を防護する線的防護方式から、人工リーフなど沖合施設や砂浜等も組み合わせることにより防護のみならず環境や利用の面からも優れた面的防護方式への転換をより一層推進する。

 (イ)省庁連携事業の推進
 海岸の防護のみならず、海のもつ様々な機能の保全に配慮し、事業の効果をより一層向上させ効率的な事業を行うため、他の事業との連携を積極的に進めている。
 具体的には、河川、ダム、港湾等に堆積した土砂を海岸侵食が顕著な海岸へ有効活用する渚の創生事業(平成14年度は18地域にて実施)や、治山事業と連携して自然環境と利用に配慮した海岸の保全(白砂青松の創出)(14年度は24地域にて実施)を、14年度に茨城県鹿嶋海岸や福井県敦賀港海岸等にて実施している。

 
図表II-6-2-8 渚の創生事業

河川、ダム、港湾、砂防設備等に堆積した土砂を海岸侵食が顕著な海岸へサンドバイパスを行い有効活用する渚の創生事業を拡充する。
 
<白砂青松の海岸((気比の松原)敦賀港海岸、潮害防備・保健保安林(福井県敦賀市))>



3)沖ノ鳥島の保全
 沖ノ鳥島は、我が国の国土面積を上回る約40万平方キロの排他的経済水域を有する国土保全上極めて重要な島であるため、点検・観測・補修等の適切な維持管理を国が海岸管理者として全額国費にて実施している。

4)地球温暖化に伴う海面上昇に対する国土保全の方策の検討
 地球温暖化に伴う海面の上昇により、沿岸域を中心に甚大な影響が懸念されることから、13年8月より有識者からなる「地球温暖化に伴う海面上昇に対する国土保全研究会」を開催し、地球温暖化により国土への影響が懸念される気象・海象変化の中でも顕著な変化が予測され、また国民への影響が大きいと懸念される海面上昇に焦点をあて、海面上昇に対応した望ましい国土保全のあり方について検討を行ってきた。その結果として、我が国が海面上昇対策に取り組む際の基本的な考え方や現時点で考え得る施策を14年5月に報告書としてとりまとめた。引き続き、今後の海面上昇の進捗に応じた短期・中期・長期における海岸保全上の対応策の検討等を行っている。

 

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