第II部 国土交通行政の動向 

第9章 我が国の持続的発展のための国際的な連携の強化と国際貢献

第1節 国際的な連携・協調メカニズムの構築とイニシアティブの発揮

(1)東アジア地域における連携強化

 2002年(平成14年)1月、小泉内閣総理大臣はASEAN歴訪の際に「日・ASEAN包括的経済連携構想」を提唱し、政府全体としてASEANとの連携強化に向けた具体策を検討することとなった。国土交通省としては、ASEAN地域と日本の間の国境を越えたモノ・人・サービス・資本・情報の自由な移動の促進を図っていくこととしている。
 人・モノの移動を促す交通システムは経済活動全体のインフラであり日・ASEANが経済連携の強化・経済活動の活性化をはかる上で、その発達は欠くことができないが、他方、交通量の増大に伴う大気汚染や交通事故増加の問題、多発する海難事故及びそれらによる海洋汚染の問題等の環境面・安全面にわたる問題も今後さらに深刻さを増すことが予想されるため、日・ASEANのハイレベル交通政策担当者間において、各国協調しての各種対策を講じる必要がある。
 これらの観点から、同年5月、第13回ASEAN交通次官級会合にて我が国(国土交通省)から、交通分野における日本とASEANとの新たな協力関係の構築を提唱し、同年9月に第1回の日・ASEAN交通次官級会合を開催した。この会合において、国際物流の円滑化、海上の安全性向上・海洋汚染防止、航空の安全・効率性向上、その他最新技術の応用による環境及び安全確保等において、日・ASEAN間の連携を一層強化することで合意した。 また、2003年(平成15年)秋にはミャンマーにおいて第1回目の日・ASEAN交通大臣会合を開催することとなった。
 また、建設分野については、ASEAN各国の建設市場における規制の調和を図っていくことが重要である。このため、日・ASEAN経済連携強化(CEP)専門家グループ会合や、日・タイ及び日・フィリピンの経済連携に関する作業部会において、我が国建設市場のASEAN諸国に対する改善要求を説明した上で意見交換を重ねているところであり、同年11月の日・ASEAN首脳会議に提出されたCEP専門家グループ報告書においても、建設分野についての日本側提案に係る記述が盛り込まれた。
 2002年(平成14年)4月、タイのバンコクにおいて、日本、タイ、インドネシア、フィリピン各国の運輸大臣・次官級の参加を得て、交通分野における共通課題について、政策協調をハイレベルで協議する場として、運輸政策推進会議(POINT:Policy Initiative in Transport)を開催した。
 初回となる今回は、地球温暖化等の環境問題への関心の高まりを踏まえ、「アジア諸都市における交通関連の環境問題とその解決策」をテーマとし、環境にやさしい都市交通体系の整備を目指すための施策について議論を行った。また、「2002年環境にやさしい都市交通に関するバンコク・イニシアティブ」を共同宣言として取りまとめ、1)交通に起因する環境汚染の現況把握、2)環境にやさしい交通機関としての都市鉄道の整備・充実、3)自動車の排ガス等の抑制を促すための車検制度や基準・認証制度の充実を今後各国協調して進めていくことで合意した。

 

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