(2)貯蓄や投資に与える影響 (貯蓄率の低下)  国民経済計算によれば、我が国の貯蓄率は近年徐々に低下する傾向にあり、今や国際的にも突出して高い状況にはなっていない。家計調査の平均貯蓄率(貯蓄純増/可処分所得×100)を見ると、世帯主65歳以上の高齢者世帯の貯蓄率では、勤労者世帯の平均貯蓄率は高くなっている一方、世帯主が無職の世帯はマイナスの平均貯蓄率となっており、無職世帯が高齢者世帯の約平均7割を占めることから、高齢者世帯全体の平均貯蓄率はかなり低いものと考えられる。これは、退職した高齢者が貯蓄を取り崩して消費に当てることによるものであり、高齢者の増加は長期的には貯蓄率の低下要因になるものと考えられる。 図表I-2-3-9 総貯蓄率・家計貯蓄率の推移 図表I-2-3-10 家計貯蓄率の国際比較(2000年) 図表I-2-3-11 世帯主の年齢階層別平均貯蓄率(平成13年)  なお、今後の生活の仕方として将来に備えるよりも現在の生活に重点を置く傾向も強くなってきていること、資産は自分の老後のために使うより子孫に残すべきだと考える高齢者の比率も年齢階級が低いほど低下していること等から、高齢者の貯蓄の取り崩しが一層進む可能性も高い。 図表I-2-3-12 将来に備えるか、毎日を楽しむか 図表I-2-3-13 年齢階級別資産の使い方  一方、高齢者の資産ストックは大きなものとなっており、特に実物資産の割合が高い。住宅や土地など実物資産の流動化が進み、高齢者が有するこれらのストックの金融資産化がしやすくなれば、貯蓄率の低下も緩和できる。 図表I-2-3-14 世帯主の年齢階級別家計資産内訳