第1節 観光振興の意義と課題 1.観光振興の意義と経済効果  観光は、ゆとりと潤いのある生活にとって重要であるのみならず、国際親善や地域の振興、産業・雇用の創出等に非常に大きな役割を果たしている。すなわち、人々にとっては、観光は生きがいや安らぎを生み出し、生活のゆとりと潤いに寄与するものであり、国際社会にとっては、国際相互理解の増進を通じて、国際親善、ひいては国際平和に貢献するものである。また、観光は、地域にとっては、交流人口を増加させ、地域の活性化に大きく寄与するものであり、特に旅行業、宿泊業、飲食産業、アミューズメント産業、土産品産業、旅行関連産業等幅広い分野を通じ、産業や雇用の創出に大きな役割を果たしている。  国民経済に対する効果を平成13年についてみると、観光に係る直接消費は20.6兆円、さらに波及効果を含めると48.8兆円、雇用効果は393万人と推計されており、我が国のGDPや雇用に占める比率でみると、他の基幹産業に匹敵する貢献度となっている。また、訪日外客による消費は1.5兆円となっている。 図表II-3-1-1 観光消費のわが国経済への貢献(2001年)  このように、観光は、様々な点から非常に重要な意義を有し、諸外国においても、政府レベルで外国人旅行者を自国に誘致するための方策をはじめとする観光政策を積極的に推進している。我が国においても、低迷する地域の経済・雇用の改善を図るための切り札として、また、サービス部門における我が国の国際収支のバランスを図っていく観点からも、観光の振興がますます重要となっている。  このことから、政府においては、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定)の中で、経済活性化戦略の30のアクションプログラムの一つとして「観光産業の活性化・休暇の長期連続化」を掲げるとともに、同年7月4日に「観光振興に関する副大臣会議報告書」をとりまとめた。また、我が国の観光立国としての基本的なあり方を検討するため、15年1月に小泉内閣総理大臣主宰の「観光立国懇談会」が発足し、同月24日に第1回会合が開催されるなど、政府として観光振興を重要な施策と位置づけ、推進していくことが確認されている。