(3)良質な持家取得の促進 1)住宅金融  住宅金融公庫は、これまで国民の住宅取得を支援するため、長期・固定・低利の資金の融資を選別なく安定的に供給してきたところである。  また、居住水準の向上や耐久性、バリアフリー、省エネルギー性能を備えた良質な住宅ストックの形成の上でも、公庫融資は、大きな役割を果たしてきた。  住宅金融公庫については、平成13年12月に閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」において、「5年以内に廃止するとともに、民間住宅ローンの証券化支援に係る業務については、住宅金融公庫が先行して行い、これを行う新たな独立行政法人を設置し、融資業務については、段階的に縮小するとともに、利子補給を前提としないことを原則とし、民間金融機関が円滑に業務を行っているかどうかを勘案して当該独立行政法人設置の際に最終決定する。なお、公庫の既往債権については、当該独立行政法人が引き継ぐ。」との方針が示されたところである。  こうした改革の中で、住宅金融公庫については、直接融資は段階的に縮小するとともに、住宅ローンの貸付自体は民間金融機関等が行い、住宅金融公庫がこれを買い取り、証券化する等の「証券化支援業務」を通じて(15年度中に実施予定)、民間金融機関等による長期・固定の住宅ローンの供給を支援することとしている。  また、13年度より新たな財政投融資制度の運用が開始され、郵便貯金や年金積立金が全額預託される制度から、真に政策的に必要な資金だけを財投債として市場から調達する仕組みへと改められたことに伴い、住宅金融公庫についても、市場による評価を踏まえた資金調達及び適切な資産・負債の総合管理(ALM)を実施するため、貸付債権の証券化や政府保証債の補完的導入を行うなど資金調達の多様化を行っており、13年3月から住宅金融公庫債券(資産担保証券)の発行を開始し、14年12月までに累計7,000億円を発行している。 図表II-4-1-8 証券化支援事業(買取型)スキーム図 2)住宅税制の充実 (ア)住宅ローン減税制度  住宅ローンの負担を軽減することにより、良質な持家の取得を促進するとともに、ゆとりある良好な住宅ストックの形成を図るため、住宅の購入、新築及びリフォーム等に係る借入金についてその一定割合を所得税額から控除する措置を講じているところである(適用期限:平成15年12月31日)。  14年度の税制改正においては、大地震時における国民の安全の確保、住宅ストックの適切な維持を図るため、一定の耐震改修工事を住宅ローン減税制度の適用対象に追加した。  また、15年度の税制改正において、転勤等やむを得ない事情により一時転出した後再入居した場合の住宅ローン減税の再適用を可能とする措置を講じることとしている。 (イ)住宅取得資金等の贈与に係る特例措置  住宅の取得に必要な自己資金の不足を補うことにより、良質な持家の取得を促進するとともに、ゆとりある良好な住宅ストックの形成を図るため、住宅取得資金等の贈与に係る贈与税の特例措置を講じているところである。  平成15年度の税制改正においては、新たに導入される相続時精算課税制度の中で住宅取得資金等に係る特例を創設することとしている。本特例では、子が親から住宅取得資金等の生前贈与を受ける場合、一般の非課税枠2,500万円に1,000万円上乗せして3,500万円まで贈与税が非課税となる。  現行の住宅取得資金等に係る贈与税の計算特例に加えて、相続時精算課税制度の中で住宅取得資金等に係る特例が創設されることにより、高齢者の保有する金融資産の若年層への移転の円滑化が図られ、消費財購入を含めた経済効果及び雇用創出効果の高い住宅投資の促進が期待される。 【参考:相続時精算課税制度及び当制度における住宅取得資金等に係る特例の概要】  (相続時精算課税制度の概要)  65歳以上の親から20歳以上の子への生前贈与について、受贈者の選択により、贈与時に贈与財産に対する贈与税(「贈与税」)を支払い、その後の相続時にその贈与財産と相続財産とを合計した価額を基に計算した相続税額から、既に支払った「贈与税」を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税をすることができる制度。  (税率)  贈与時に支払う贈与税については、2,500万円まで非課税、2,500万円を超える部分につき、一律20%で課税。  (適用対象財産等)  贈与財産の種類、金額、使途、贈与回数については制限なし。  (相続時精算課税制度における住宅取得資金等の贈与に係る特例) ・一般非課税枠2,500万円に1,000万円を上乗せし、3,500万円まで贈与税非課税とする。 ・親の年齢が65歳未満である場合についても適用を可能とする。