(2)新幹線鉄道の整備  新幹線は、国土の骨格を形成する大量・高速交通機関であり、その整備により、移動時間が大幅に短縮され、沿線都市の人口の増加や地域経済の発展に大きく寄与する(注)。また、新幹線は交通機関の中でももっとも安全(昭和39年の東海道新幹線の開業以来、乗客の死亡事故はゼロ)であり、省エネルギーで環境にやさしい交通機関(CO2排出原単位は航空機の1/5、自家用車の1/8、エネルギー消費量は航空機の1/4、自家用車の1/6)である。  既存の新幹線については、JRにより更なるサービス向上のための取組みとして、例えば東海道新幹線の品川新駅の整備(平成15年開業予定)により1時間当たりの本数を現在の最大11本から15本に増加させる等の輸送力増強等が行われている。  また、新幹線の安定的な輸送を将来にわたり確保していくため、全国新幹線鉄道整備法の一部を改正し、トンネルや橋梁等の構造物の大規模改修に備える引当金制度を創設した。この制度では、開業からの経過年数や車両走行実績、財務状況等から、引当金の積立てが必要かつ適当と判断される場合、国土交通大臣は新幹線の所有営業主体を引当金を積み立てるべき主体として指定することができることとし、指定を受けた所有営業主体は国土交通大臣の承認を受けた引当金積立計画に従い、引当金を積み立てなければならないこととされた。なお、指定を受けた所有営業主体が積み立てる額については、法人税の計算上損金算入が認められることとなっている。この制度に基づき、平成14年8月、東海道新幹線について引当金積立主体としてJR東海を指定し、同年10月、引当金積立計画の承認を行った。 図表II-5-2-6 整備新幹線大規模改修のスキーム  整備新幹線については、全国新幹線鉄道整備法に基づき整備計画が定められており、従来から政府・与党間の申合せ等に基づき着実に整備を推進している。平成12年12月18日には、新しい政府・与党申合せが決定され、開業効果をできる限り早期に発揮させることが国民経済上重要との観点から、既に着工した区間の早期完成を優先して行うとともに、収支改善効果や投資効果等を厳密に検証した上で、既に着工している区間と同時開業が望ましい区間を新たに着工することとした。具体的には、北陸新幹線上越・富山間及び九州新幹線博多・西鹿児島間のフル規格での着工などが決定され、これにより東北新幹線盛岡・八戸間、八戸・新青森間、北陸新幹線長野・富山間、石動・金沢間、九州新幹線博多・新八代間、新八代・西鹿児島間の3線6区間(約630km)を整備することとなった。このうち、東北新幹線盛岡・八戸間は平成14年12月1日に開業し、東京・八戸間の所要時間は従来の3時間33分から最短で2時間56分に短縮された。 図表II-5-2-7 整備新幹線の現状 図表II-5-2-8 新幹線整備後の距離と概算所要時間 <東北新幹線はやて出発式> (注)例えば、東北新幹線開業以来、12年までに沿線都市の人口が約21%増加した。