第I部　活き活きとした地域づくりと企業活動に向けた多彩な取組みと国土交通施策の展開

第1章　活き活きとした地域・企業への確かな胎動

第1節　地域・企業の挑戦

　我が国の社会経済は、大きな変革期を迎えており、地域や企業は、国民の価値観・ライフスタイルの多様化、少子高齢化の進展、地球規模化、情報通信技術の高度化、環境問題への配慮、地方分権の進展など様々な変化に対応することが求められている。

　このような様々な変化が個別の地域や企業に与える影響は、多種多様であり、また、かつてのような欧米諸国や他地域への「追いつき」を目標としていた時期を過ぎた現在、各地域や企業にとって画一的・一律的な目標を設定し、活動することに限界が生じてきている。そのため、「平均的」・「標準的」な発想では捉えきれない「個性的」な地域や企業のあり方への確かな動きが始まっている。

　このような動きを踏まえ、活き活きとした地域・企業のあり方を明らかにするため、我が国のそれぞれの地域・企業において実際に行われている取組みの事例を収集し、分析することとした。

　このため、都道府県から提供された情報、地域づくりや企業活動に係る各種のデータベース、表彰事例等幅広い情報を基に把握した、地域活性化に取り組み、成果を上げている事例と特徴ある経営戦略や技術・商品開発などの取組事例について、市区町村と企業に対し、アンケート調査・事例調査を実施した(調査方法については、補注参照)。事例調査に回答を得られた事例の中から、活き活きとした地域づくりや企業活動に取り組み、また、取り組もうとしている地域・企業にとって、さらには、今後の国土交通施策の展開を議論する上で参考となると考えられる事例を、できる限り多く、次節に掲載した。

　また、このような取組みの事例におおむね共通して見られる、成果へとつながる要素を抽出・整理することとした。

　もとより、それぞれの地域や企業を取り巻く環境の変化や地域の置かれた条件等は様々であり、それを実現するための道筋も一様ではない。

　地域・企業は、その状況に応じて、活き活きとした地域づくりと企業活動を支える共通要素や、それらの要素を充足するために加えられた様々な工夫のうちから、必要なものを選択し、組み合わせ、さらに新たな創意工夫をこらし、その地域や企業の実情に沿った独自の取組みへと構成していくことによって、成果を上げていくことが期待される。

　我が国においては、厳しい条件や環境等に直面しながら、活き活きとした地域づくりと企業活動に向けて、成果を上げ、また、成果を上げつつある地域・企業の多彩な取組みが次節に掲載した事例以外にも多く存在している。

　国土交通行政においては、我が国の大都市圏から地方まで、どの地域も、どの産業に属する企業も、活き活きとした地域・企業へと向かう十分な可能性を有しているとの考えの下、このような、創意・工夫・知恵により、自立的に取り組む地域・企業の挑戦について、その障害の除去を図り、また、関係者と一丸となって支援していかなければならない。