第II部 国土交通行政の動向 

第4節 魅力ある観光交流空間づくり

1.「一地域一観光」の推進

 近年、我が国においては、産業構造の変化等により、地域の活力の低下や画一化が進み、それぞれの歴史、文化、伝統の相違に基づく地域の特徴、個性、まちの魅力が失われ、地域の潜在力が活かしきれていないと指摘されている。また、旅行者の行動も体験型、目的達成型の志向が高まるなど多様化、個性化、高質化している中で、国内観光地の中にはこれらの変化への対応が遅れているところもあり、旅行者のニーズに十分応えているとは言い難い状況である。
 しかしながら、近年、各地域の中には、核となる人材が住民参加の企画づくり等を通じて、地域固有の個性豊かな自然や歴史、文化等のあらゆる観光資源を最大限に活用することにより、訪日外国人をはじめとして国内外の交流人口を惹きつけ、観光を活かした個性・魅力ある地域づくりに取り組む動きが見られる。
 このように、各地域がそれぞれの持つ魅力を自主的に発見し、高め、競い合う「一地域一観光」を推進していくことが重要である。

 
図表II-2-4-1 観光交流空間づくりモデル事業地図

観光交流空間づくりモデル事業は、平成15年度、北海道、秋田県と岩手県、福島県、千葉県と茨城県、石川県、愛知県と岐阜県、三重県、島根県と山口県の8地域が選定された。

1)観光交流空間づくりモデル事業の実施
 地域の個性を活かした魅力ある観光交流空間づくりのための自主的な取組みを国土交通省がハード・ソフトの両面から総合的、重点的に支援する「観光交流空間づくりモデル事業」を平成15年度から実施している。15年度は、国土交通省ホームページ上で行った顧客満足度(CS)調査の結果も参考にしながら8地域を選定し、支援策の一環として、モデル地域においてNPO等が実施する社会実験等の調査・検討の支援を実施した。

2)「観光カリスマ百選」
 従来型の個性のない観光地が低迷する中、各観光地の魅力を高めるためには、観光振興を成功に導いた人々の類まれな努力に学ぶことが極めて効果が高く、各地で観光振興にがんばる人を育てていくため、その先達となる人々を「観光カリスマ百選」として選定している。
 平成14年12月に「観光カリスマ百選」選定委員会が設置・開催され、以後16年2月までに計5回、選定委員会が開催され、計63名の観光カリスマを選定した。観光カリスマは、15年4月に開催された「観光カリスマ タウンミーティング イン 東京」をはじめ各地で講演やシンポジウムにおける講師をされるなど、個性的な地域づくりの推進に先導的な役割を果たされている。

3)観光まちづくりの推進
 従来の画一的な観光開発に代わり、地域の創意工夫により当該地域の自然、文化、歴史等を活用した個性的な観光まちづくりを進めるため、地方運輸局が旅行事業者や観光関係団体等関係者と協力し官民一体となって、「観光まちづくりプログラム策定推進事業」を行っており、実務経験者等からなる観光まちづくりアドバイザーを派遣するとともに、広域観光ルートの設定、交通環境改善等を内容とする「観光まちづくり実施支援プログラム」を策定する等の支援を行っている。

4)魅力ネットサイトの創設
 全国の各地域で「一地域一観光」に向けた施策を進める契機となるよう、全国の市区町村及び国民に地域の魅力さがしを呼び掛け、所在・在住する地域の観光魅力をインターネットを通じて解説文と写真等で投稿してもらい、投稿データについて、「発見!観光宝さがしデータベース」サイトで公開し、地域の魅力を発信する「一地域一観光魅力ネットサイト事業」を平成15年度から実施している。
 また、日本についての生活上の基本情報、宿、食、遊、学、体験、移動、イベント、土産物などの情報に加え、様々な情報を検索できる機能や利用者の満足度を向上させる各種の機能などを持たせた観光のためのポータルサイト(インターネットの入り口となる総合的なサイト)として、平成15年度内に「にっぽん魅力サイト」を構築することとしている。同サイトでは、各省庁、国際観光振興機構(JNTO)のみならず、地方公共団体、内外の観光関連事業者などのホームページとも連携して、広範な情報を検索できるほか、観光地づくりのノウハウの情報提供を行う。

5)観光プラスワン大作戦の実施
 「一地域一観光」国民運動の展開に向け、地域の保全すべき観光資源や魅力向上のための改善すべきポイントの評価・点検など、地方公共団体と観光事業者、NPO等の関係主体の協働による観光地の魅力づくり活動を支援・推進している。

6)自然ガイドツアーによる観光地の振興
 近年の自然体験志向等の観光ニーズの変化を踏まえ、単に訪れただけでは気づかないような自然の不思議さや面白さを自然ガイドの解説を受けながら味わう、自然ガイドツアーを造成することにより、観光地の振興を図っている。平成15年度には、旅行者が安心して、かつ満足のできる自然ガイドツアーに参加できるようにするため、ガイド事業者等が具体的に配慮すべき事項をまとめるとともに、自然資源を持続的に観光利用していくための方策の検討を行っている。

7)地域伝統芸能等を活用した観光の振興
 地域の観光振興を図るため、地域伝統芸能等を活用した地域レベルのイベントに対して後援等を行っている。また、「地域伝統芸能等を活用した行事の実施による観光及び特定地域商工業の振興に関する法律」に基づき、平成15年10月に(財)地域伝統芸能活用センターが「第11回地域伝統芸能全国フェスティバルひろしま」及び「第3回地域伝統芸能による豊かなまちづくり大会ひろしま」を開催した。

 

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