第II部 国土交通行政の動向 

(1)船舶の安全性の向上及び船舶航行の安全確保

1)船舶の安全性の向上
 船舶の安全に関しては、国際海事機関(IMO)を中心に国際的な基準が定められており、平成17年1月のLL条約(国際満載喫水線条約)改正に伴い、技術要件等についての国内法令の改正を行った。また、技術的な規制の効果の客観的な評価を行う「船舶の総合的安全評価」を実施している。
 また、サブスタンダード船(注1)の排除のため、ポートステートコントロール(PSC)(注2)を厳格に実施するとともに、平成16年11月には第2回パリMOU・東京MOU合同閣僚級会議において、国際協調の更なる推進等について閣僚宣言を採択した。
 さらに、ITを活用して船舶の推進機関等の状態を陸上から遠隔監視・診断する「高度船舶安全管理システム」の構築を目指して研究開発を進めており、平成16年度にシステム全体の総合実証実験を実施し、17年以降の実用化を目指している。

2)船舶航行の安全確保
 船舶の高速化等海上交通環境の変化に対応し、大規模海難の発生を防止するなど船舶航行の安全を確保するため、既存航路の拡幅・増深及び水深の維持、船舶自動識別装置(AIS)を活用した次世代型航行支援システムの整備等を行うとともに、平成16年度には、老朽化した航路標識施設及び機器の更新等の改良・改修を552箇所、避難港の整備を下田港等7港で実施している。また、外国人の運航する船舶の海難防止対策の一環として英語版水路誌等を刊行し、水路図誌の充実を図っている。
 旅客船事業者については、運航管理制度(運航管理規程の届出及び運航管理者の選任の義務付け)により、輸送の安全確保を図っている。
 水先制度については、最近の規制緩和の動向、港湾における国際競争力確保のためのコスト低減への要請への強まり、近年における日本人船員の減少傾向等の水先を取り巻く経済社会情勢の変化に対応するため、船舶の航行の安全性の確保に留意しつつ、時代に即した制度となるよう抜本的な見直しを行うため、議論を進めている。
 さらに、マラッカ・シンガポール海峡を通航する船舶は多様化・複雑化が進み、同海峡利用国の航行安全対策の一層の充実強化を目指す動きが進みつつある中、海賊行為が多発する等テロの発生も懸念されていることから、今後の同海峡における航行安全対策、海洋汚染防止、保安対策等を進めていくために不可欠な同海峡沿岸国及び利用国間の国際的な協力関係の構築に向けて、我が国は主要な海峡利用国の一つとして積極的な役割を果たすこととしている。


(注1)海上安全・海洋環境保全に関する条約等の基準を満たさない船舶
(注2)海上における人命の安全の確保及び海洋環境の保全等を目的にした寄港国における外国船舶への監督をいう。

 

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