第II部 国土交通行政の動向 

1 犯罪・テロ対策の推進

(1)各国との連携による危機管理・安全保障対策

1)安全かつ容易な海外渡航イニシアティヴ(SAFTI)への取組み
 米国同時多発テロを受けて、G8サミット等の場において交通セキュリティの確保が主要な問題として取り上げられており、平成16年6月に交通保安等に関する具体的な施策を行動計画として採択された「安全かつ容易な海外渡航イニシアティヴ(SAFTI)」について、国土交通省はその策定段階から積極的に対応するとともに、その実施に取り組んでいる。

2)海賊対策
 全世界、特に東南アジア周辺海域における海賊事件は、依然多発しており、また、海賊の凶悪化・組織化も問題となっている。海上輸送路を同海域に大きく依存している我が国にとって、その安全を図ることは重要な課題である。このため、海上保安庁では、平成12年に開催された海賊対策国際会議において採択された「アジア海賊対策チャレンジ2000」に基づき、東南アジア周辺諸国へ随時巡視船・航空機を派遣しており、16年にはインド等で派遣先の海上保安機関との間で連携訓練等を行うとともに、所要のしょう戒活動を行っている。また、マレーシア及びインドネシアにおける海上保安機関創設のための各種支援、海上保安大学校への留学生の受け入れ、海上保安機関職員を招へいしての海上犯罪取締り研修などを実施し、各国との連携・協力に努めている。16年6月には、「アジア海上保安機関長官級会合」を東京で開催し、海賊対策分野での協力関係の一層の強化に加え、新たに海上テロ対策分野での協力関係の構築について合意され、「アジア海上セキュリティ・イニシアチブ2004」として採択された。
 また、日本関係船舶における効果的な自主警備対策の推進、沿岸国の緊急通報先の周知、緊急情報伝達体制の整備を図っているほか、関係省庁及び民間関係者からなる連絡会議の開催を通じ、我が国全体としての取組みを一体的に推進している。

 
図表II-6-3-1 日本関係船舶にかかる海賊及び船舶に対する武装強盗事件等発生地点(2003年)

2003年の日本関係船舶にかかる海賊及び船舶に対する武装強盗事件等の発生場所は、インドネシア、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、インド沿岸となっている。

 
図表II-6-3-2 最近の海賊及び船舶に対する武装強盗事件等の発生状況

海賊及び船舶に対する武装強盗事件は増加傾向にあり、発生は東アジアで最も多く、年間200件に迫っており、インド洋、アフリカ、中南米では約70件から約100件である。2003年では452件の武装強盗事件が発生している。
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3)拡散に対する安全保障構想(PSI)の推進
 国際社会の平和と安定に対する深刻な脅威となっている大量破壊兵器、その運搬手段及びそれらの関連物資の拡散を阻止することを目的とする「拡散に対する安全保障構想」(PSI)は、参加国が単独で又は連携して、各国国内法及び国際法の枠組みの下で拡散阻止のための措置を検討する国際的な取組みであり、我が国もPSIの中核を担うコア・グループ国の一員として積極的に貢献している。
 海上保安庁は、PSIの関係会合への出席や海上阻止訓練に巡視船や職員を派遣しているほか、ASEAN各国の海上法執行機関に対するアウトリーチ活動(連携の拡大に向けた働きかけ)を実施する等、積極的に貢献している。
 また、平成16年10月には、オブザーバー参加(陪席参加)を含め22ヶ国の参加の下、我が国としては初めての主催となる海上阻止訓練を行った。海上保安庁から巡視船等5隻、航空機3機、テロ対処部隊等が参加して、我が国自衛隊のほか、オーストラリア、フランス、アメリカからの軍及び法執行機関と連携訓練を実施し、練度を向上させ、相互の連携を強化するとともに、アジア大洋州地域におけるPSIに対する理解の促進を図った。

 
<海上阻止訓練「チーム・サムライ04」においてヘリコプターから容疑船に降下する特殊部隊>



 

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