5 運輸・建設・観光産業の事業環境の整備  東アジアにおける日本企業の事業展開が進む中、運輸・建設・観光産業においても成長する東アジアの市場に向けた取組みが見られる。  円滑な人流・物流の確保は、経済活動にとって不可欠である。東アジアにおいて我が国の運輸業が事業を展開することは、東アジアの経済活動拡大に伴って人流・物流が増大しつつある状況に適切に対処し、東アジアの発展を支えるものである。  我が国の建設業がその有する優れた施工技術や施工管理のノウハウを活かした事業展開を行うことは、東アジアのさらなる発展に不可欠な社会資本の効率的・効果的な整備に資するとともに、現地企業への技術移転を通じて建設産業の育成にも寄与することとなる。また、東アジアにおいては、通貨危機により東南アジアの建設投資に落込みが見られたものの、中国の成長持続、極東ロシアの地下資源開発、東南アジアの経済成長の回復など、今後も社会資本整備の需要が見込まれる地域であることから、今後さらに受注を増やしていくことが期待される。  また、観光産業は、経済的観点からのみならず、国際交流を促進するという点からも重要である。東アジアにおいて我が国観光産業が事業を展開することは、東アジアへの観光客増大により東アジアの経済に寄与するとともに、東アジアと日本との交流の促進にも寄与する。  このため、運輸・建設・観光産業が事業展開をする上での障壁を解決することが重要であり、ビジネス環境の改善、ビジネス機会の拡大の観点から、世界貿易機関(WTO)を中心とする多角的な自由貿易体制を補完し、我が国の対外経済関係の発展及び経済的利益の確保に寄与するEPA/FTAの締結交渉を進めていく必要がある。さらに、東アジアの企業と我が国企業の間の連携を促進し、東アジアの企業と我が国企業の双方に利益をもたらす新たな事業機会の創出へとつなげていくことが重要であり、こうした観点からも、EPA/FTAの締結交渉や官民協力の枠組みづくりなどに取り組んでいく必要がある。  例えば2004年(平成16年)11月のフィリピンとのEPA締結交渉の大筋合意においては、我が国の建設企業が受注することができる分野の拡大や建設業免許の取得手続の合理化・簡素化、フィリピンにおける海運代理店業及び海運フォワーダー業(海運貨物利用運送業)について外資比率100%の企業の参入が確実に認められることなどのサービス分野の自由化が進められることとなった。また、観光分野における人材育成、情報交換等の協力や航空・海上輸送の安全確保等に関する協力についても盛り込まれた。さらに、官民合同会議の開催など建設業に係る日比建設企業のビジネスマッチングと将来の協働関係構築を目指した官民協力を推進することとしている。 図表I-4-1-2 フィリピンとのEPA合意における建設業・海運関連事業の自由化