第I部 安全・安心社会の確立に向けた国土交通行政の展開 

コラム・事例 地球温暖化と大雨、台風の関係

 地球温暖化の進行に伴って、大雨や台風の発生はどのように変化するのでしょうか。

1.地球温暖化と大雨の関係について
 日本における大雨の発生数が長期的に増加傾向にあるのは、地球温暖化が影響している可能性があり、地球温暖化が今後進行した場合、さらに大雨の発生数は増加すると予測されます。
 我が国における観測結果の分析によると、過去100年において、自然災害につながる可能性のある、日降水量100mm以上や200mm以上の降水が発生する日数は増加傾向にあります。
 このように大雨が増加する傾向にあるのは、日本だけでなく東アジアの広い範囲でも共通しており、地球温暖化やそれに伴う水蒸気量の増加等の世界的な規模の変動が寄与している可能性があります。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第三次評価報告書の「中・高緯度域の大部分、特に北半球において、年総降水量に占める大雨や極端な降水現象による降水量の割合が増えつつある可能性が高い」という見解は、「日本の大雨の出現数が長期的に増加している」という観測結果と矛盾はありません。
 さらに、21世紀末頃を想定した気象庁の地域気候モデルによる地球温暖化予測実験では、「日降水量100mm以上などの大雨の発生数が日本の多くの地域で増加する」とともに、「6月から9月に現在よりも降水量が増加する」という予測結果が出ていることから、集中豪雨や台風が多発する夏期の防災が大きな課題となってくると考えられます。

 
日本の陸上における月降水量の将来(2081〜2100年の平均)と過去の再現結果(1981〜2000年の平均)
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2.地球温暖化と台風の関係について
 地球温暖化と台風の関係については、現時点では、地球温暖化の影響が台風の大きさや強さに及んでいると結論付けることはできません。
 台風の年間発生数に対する、最大風速が毎秒33m以上の「強い」勢力を持つ台風の発生割合は、1970年代後半から80年代後半にかけて増加傾向にありましたが、80年代後半をピークに90年代後半まで減少傾向が続き、2000年代になって再び増加に転じています。このような動向は10〜20年程度で増減するものであり、地球温暖化による気温の上昇傾向と明瞭な相関があると言うことはできません。
 しかし、気象庁気象研究所や財団法人地球科学技術総合推進機構を中心とする研究グループによる21世紀末頃を想定した温暖化予測実験によると、全球的な熱帯低気圧の発生数については、現在気候再現実験における発生数よりも30%程度減少する一方、海上(地上)の最大風速が45m/sを超えるような非常に強い熱帯低気圧の出現数については、地球温暖化に伴って増加する傾向があるとされており、災害が全体として激化することを想定することが重要と考えられます。
 ただし、現在のところこのような数値実験の結果がどこまで信頼できるかを判断するためには、更なる研究が必要です。

 
熱帯低気圧の強度別に示した熱帯低気圧の年平均発生数の頻度分布
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