第II部 国土交通行政の動向 

(2)ITSの推進

 高度道路交通システム(ITS)は、最先端の情報通信技術を用いて人と道路と車両とを一体のシステムとして構築するもので、高度な道路利用、運転や歩行等の負担の軽減を可能とし、道路交通の安全性、輸送効率及び快適性の飛躍的向上を実現するものである。これにより、今日の自動車社会が抱える、交通事故や渋滞、環境問題、エネルギー問題等の諸問題の解決に大きく貢献することが期待される。また、ITSの実用化の進展は、自動車産業、情報通信産業等の関連する分野において、大規模でかつ新たな市場の形成に結びつくことも期待される。

1)ITSの導入・展開
(ア)ETCの普及促進
 有料道路の料金所をノンストップ・キャッシュレス化することにより渋滞解消や利便性の向上を図るために導入を進めているノンストップ自動料金支払いシステム(ETC)については、平成17年10月に全国の利用率が週間平均で50%を突破し、料金所渋滞も大幅に解消している。さらに、多様で弾力的な料金施策の実施や車載器購入支援等を実施するなど普及促進を図っている。

 
図表II-4-7-3 ETC(ノンストップ自動料金支払いシステム)

ETCとは、料金所に設置されたアンテナが自動車の車載器と無線通信し、料金支払いをノンストップ化するシステムのことであり、高速道路渋滞の主な要因の一つである料金所渋滞の解消、緩和を図っている。

(イ)道路交通情報提供の充実
 渋滞や交通規制等の道路交通情報を即時にカーナビゲーションシステムに提供する道路交通情報通信システム(VICS)について、サービスエリアの拡大、道路交通情報提供の内容の充実を推進し、その結果、VICS対応の車載機は平成17年6月末に1,200万台を突破した(VICSセンター調べ)。今後は引き続き、3メディア対応型VICS車載機(注1)の更なる普及促進を図るとともに、高精度な道路交通情報の提供等のVICSの高度化を推進していく。
(ウ)バス事業におけるITSの活用
 バスの時刻表、路線・系統等の固定情報について標準データ形式を定め、さらに平成17年度においては、実証実験等を通じて、新たにリアルタイム運行情報(注2)についても標準データ形式を定め、効率的なバス情報提供のためのシステム化を推進している。
(エ)歩行者等の移動支援
 歩行者等の快適な移動を支援するため、関係機関と連携して、バリアフリー情報等の移動に必要な情報について、携帯端末等への提供を推進している。
(オ)ITSの普及方策の強化
 ITSの普及と更なる発展を目指すため、愛知万博やITS世界会議2005等において、官民を挙げた世界最先端のITSを提示するとともに、これを契機として、官民の連携・協調の下、ITSの普及方策について検討を進めるなど、新たな展開を推進している。

2)ITSに関する技術開発
(ア)新たなITSサービスの開始
 一つのITS車載器で、1)あらゆるゲートのスムーズな通過、2)場所やニーズに応じた地域ガイド、3)タイムリーな安全走行支援情報というサービスを、平成19年から開始するための取組みを推進しており、17年度は、官民共同研究の実施、規格・仕様を策定した。

 
図表II-4-7-4 ITS車載器イメージ

将来は、一つのITS車載器で(1)あらゆるゲートのスムーズな通過、(2)場所やニーズに応じた地域ガイド、(3)タイムリーな安全走行支援情報というサービスを受けることができるようになる。

 
図表II-4-7-5 展開シナリオ

平成17年度(2007年度)から、情報提供サービスを開始している。

(イ)走行支援道路システム(AHS)
 ITを活用し、道路と車両が連携し、ドライバーへの注意喚起等により、事故を削減し、安全で快適な自動車の走行を支援するシステムの研究開発を推進している。

 
図表II-4-7-6 走行支援道路システム(AHS)のイメージ(追突事故防止のシステムイメージ)

走行支援道路システムとは、ITを活用し、道路側からの情報を車両側が即時に受け取ったり、警報、運転操作の支援等のシステムであり、事故を削減し、安全で快適な自動車走行の実現を図っている。

(ウ)先進安全自動車(ASV)プロジェクトの推進
 エレクトロニクス技術により、安全性を格段に高めた先進安全自動車(ASV)の開発・普及の促進に取り組んでいるASVプロジェクトにおいては、見通しの悪い道路等における事故を低減するため、車同士の通信を利用した運転支援システムの検証実験を北海道で行うなど実用化に向けた検討を行っている。

 
図表II-4-7-7 通信を利用した運転支援のイメージ(先進安全自動車)

先進安全自動車とは、歩行者保護及び突き倒し防止前部構造、路面センサー、前方障害物センサー、周辺視認性向上カメラ、後方障害物センサー等を備えた自動車のことである。自動車や道路が互いに通信を行うことによる運転支援が可能となる。

(エ)ナンバープレートの電子化
 スマートプレート(電子ナンバープレート)とは、自動車の登録番号等を記録したICチップを、ナンバープレート上に取り付けたものである。スマートプレートを用いることで車両の電子的識別が可能となり、ナンバープレートの偽変造防止、車検業務の高度化等自動車交通における安全対策等への活用が期待されており、平成17年は、愛知万博等において、これまでの検討及び実証実験の結果を活かした実演等を行った。

 
図表II-4-7-8 スマートプレート

スマートプレートとは、自動車の登録番号等を記録した I Cチップをナンバープレート上に取り付けたものである。スマートプレートを用いることで車両の電子的識別が可能となり、ナンバープレートの偽変造防止、車検業務の高度化等自動車交通における安全対策等への活用が期待されている。


(注1)FM多重放送に加え、電波ビーコン、光ビーコンからの情報も合わせて受信できるVICS車載機
(注2)現在の時刻における運行状況等の情報

 

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