はじめに  安全・安心の確保は、すべての国民が求める最も重要な課題である。しかし、世界各地におけるテロの頻発、自然災害や事故・トラブルの多発、鳥インフルエンザやBSE(牛海綿状脳症)等の感染症の発生・拡大、少年・外国人犯罪の急増等に代表される国内治安の悪化等、国民の安全・安心を脅かす要因が今までになく増加している。加えて、少子高齢化、経済活動のグローバル化等を始めとする社会構造の変化等に伴い、新たな課題が顕在化している。  特に国土交通省に深く関係する分野では、平成16年から17年にかけて、国内では地震、台風、集中豪雨等の自然災害が頻発するとともに、交通分野における事故や安全上のトラブルが多発し、海外では公共交通機関を標的としたテロ事件等が発生した。また、建築物の構造計算書の偽装問題が発生するとともに、アスベスト問題が広く知られるようになった。  自然災害、事故、テロ等に対し、安全・安心な社会を確立するためには、これらの課題について、早急に取り組むことが不可欠であり、国土交通省としては、省を挙げて施策を推進している。  このような状況を踏まえ、第I部では、平成16年から17年にかけて発生した自然災害、事故、テロ等を概観するとともに、社会構造の変化等に伴って顕在化した課題を分析し、真の「安全・安心大国」の実現に向けた今後の国土交通施策の展開の方向性について記述している。  また、国土交通行政全般としては、1)自立した個人の生き生きとした暮らしの実現、2)競争力のある経済社会の維持・発展、3)安全の確保、4)美しく良好な環境の保全と創造、5)多様性のある地域の形成を目標として施策を推進している。第II部においては、これらの目標を実現するための政策課題を10に整理し、具体的な取組みを報告している。