コラム・事例 神田川・環七地下調節池による効果と教訓  昨年度(平成16年度)の「国土交通白書」では、「都市水害への備えは地下にあり」として、東京都の神田川・環状七号線地下調節池(環七地下調節池)を取り上げ、その効果を紹介しましたが、同事業は、平成17年9月4日から5日にかけて東京都を中心とする首都圏で発生した集中豪雨においても、一定の効果を発揮しました。  今回の総雨量は、同じ地域で平成5年に発生した台風第11号による総雨量とほとんど同じでしたが、神田川の当面の整備目標である時間雨量50mmを大きく超える同100mm以上の降雨(時間雨量としては、昭和57年7月の長崎豪雨、平成12年9月の東海豪雨に匹敵)という、極めて短時間に集中した降雨であったため、河川の水位が急激に上昇しました。この結果、神田川流域で約114haが浸水し、東京都中野区及び同杉並区を流れる妙正寺川及び善福寺川付近で約3,700戸の浸水被害が発生しました。  今回の集中豪雨では、供用中の環七地下調節池第一期区間に約24万m3の洪水を貯留したことに加え、供用前でしたが安全性を確認の上緊急的に活用した第二期区間にも約18万m3の洪水を貯留しました。両区間合計で約42万m3の洪水を貯留したことにより、浸水を免れた区域は約30haと推定され、同事業の効果は発揮されたと言えます。  しかしながら、この集中豪雨のように時間雨量100mmを超えるような異常とも言える降雨に対しては、洪水氾濫や土砂災害そのものを発生させないというこれまでの対策だけでは限界があります。さらに、平成17年には総雨量1,000mmを超える異常とも言える降雨も発生しており、集中豪雨による被害は、近年、気候変動等の影響により増加傾向にあります。  そこで、洪水氾濫等を発生させないというこれまでの対策に加え、災害危険区域等の土地利用規制や止水板・土のう等の常備への誘導といった個々人の住まい方や、二線堤(輪中堤)の整備といった氾濫した洪水の拡散防止など、氾濫等が発生した場合でも洪水氾濫域等で被害を最小化する対策を、今後は新たに展開していく必要があります。