2 少子高齢化を踏まえた日常生活の安全・安心 (安全・安心に外出等ができる環境の整備)  高齢者人口の増加に伴い、今後高齢者の移動制約・居住環境の問題が社会的に一層大きくなるものと考えられる。高齢者は、一般に加齢とともに身体機能が低下するため、移動の際には階段の昇降、段差の乗り越え等物理的に大きな制約を受けることとなり、高齢者が、安全に、かつ、安心して外出・移動できることは、日常生活を支え、自立を支援し、社会参加を促進するなど、高齢者の生活の質を高めるための大前提である。  このような中、高齢者が外出するに当たって障害となるものとして、道路や公共交通機関の使いにくさを挙げる割合が高くなっており、高齢者の外出機会を増大させるため、これらを早急に改善する必要がある。  また、高齢者が安心して暮らせる居住環境を確保するため、居住環境を高齢者の自立や介護に配慮したものにすることが求められている。  さらに、子育て支援のため、妊産婦、子ども及び子ども連れの人が安全に、かつ、安心して外出・移動等が可能かという視点からの環境整備も重要である。 図表I-2-1-3 高齢者(60歳以上)の外出時の障害(複数回答) (高齢者の交通事故)  内閣府の意識調査によると、高齢者の運転免許保有者が増加している中、自分1人での外出手段として45%を超える高齢者が自動車・バイク・スクーターを利用しており、この割合は近年上昇している。また、自分で自動車を運転する高齢者の運転頻度については、「ほとんど毎日運転する」が6割を超え、約9割が週2、3回以上運転している。さらに、警察庁の意識調査によると、70歳以上の家族が車を運転することについて、「危険だと思うが、移動手段がないので、運転はやむを得ない」と答えた者が28.4%となっており、70歳以上の家族の運転の目的としては「買物のため」、「通院のため」、「職業として」といった回答が多いことから、車が高齢者の生活の足となっていることがうかがえ、高齢者人口の増加に伴い、今後更なる高齢者による自家用車利用の増加が予想される。 図表I-2-1-4 高齢者(60歳以上)の外出手段(複数回答) 図表I-2-1-5 70歳以上の家族が運転することについてどう思うか 図表I-2-1-6 70歳以上の家族の運転目的  このような状況の下、自動車の運転者を第1当事者(注)とする死亡事故のうち、高齢者によるものが増加している。また、交通事故総死者数に占める高齢者の割合は年々上昇しており、人口10万人当たり交通事故死者数でも65歳以上が全年齢層で最も多く、高齢者に関する交通事故の状況は深刻さを増している。 図表I-2-1-7 自動車運転者(第1当事者)の若者・高齢者別死亡事故発生件数の推移 図表I-2-1-8 年齢層別交通事故死者数の推移 図表I-2-1-9 年齢層別人口10万人当たり交通事故死者数 (注)交通事故の当事者のうち、過失が最も重い者又は過失が同程度の場合は被害が最も軽い者