1 日常生活における対策の実施 (だれもが安全で円滑に利用できる公共交通の実現)  高齢者、障害者、妊産婦、子ども、子ども連れの人、外国人を含めたすべての人が、安全に移動できる環境づくりに向け、公共交通が果たす役割は大きい。また、高齢者に関する交通事故が増加している中で、バリアフリー化の推進により公共交通機関の利便性の向上を図ることは、高齢者層による公共交通機関の利用を促進し、交通事故の低減にも資すると考えられる。このため、だれもが円滑に利用できる公共交通の実現を図るべく、駅等の交通結節点における利便性向上、乗継円滑化及び情報提供の高度化を重点的に進める必要がある。  また、事業者におけるノンステップバス(注1)等の導入を更に促進するとともに、通常の公共交通によっては対応することが困難な、高齢者、障害者、乳幼児等の安全な移動へのニーズにきめ細やかに対応するため、福祉タクシー(注2)、スペシャルトランスポートサービス(STS)(注3)等、ドア・ツー・ドアの輸送サービスの提供を充実させることが求められている。 (だれもが安全で暮らしやすいまちづくり)  過度に自動車に依存することなく、歩いて暮らせるまちづくりに向けて、街なか居住を進め、徒歩圏内に生活関連施設等が近接するコンパクトなまちづくりを推進することが重要である。まちづくりに当たっては、まちづくりの主体である地方公共団体が、まち全体を視野に入れ、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたまちづくりの基本的な方針を提示するとともに、計画的、段階的に、安全、快適な歩行者空間等の整備を進めることが大切である。  また、福祉部局を始め関係部局とも連携し、多様な居住の場の整備や不足する高齢者、障害者、子育て家族等が必要とする施設のまちなか等での整備を支援し、地域における居住・福祉・にぎわい等生活機能の創出を図る必要がある。  さらに、だれもが安全に生活して暮らせるように、高齢者、障害者、子ども等にも配慮した、建築物における日常的な事故防止対策も推進する必要がある。 (ITを活用した情報提供の充実)  安全・安心に生活・移動できる環境を構築するためには、個人の属性や状況に応じた適切な情報を提供することが重要である。この観点から、「移動経路」、「交通手段」等シームレス(注4)な移動に必要な情報を提供する自律移動支援システムの実用化に向けた研究開発等、ユビキタス・ネットワーク技術(注5)、GIS(地理情報システム)(注6)等の活用による情報提供の充実に向けた取組みを進める必要がある。 (一体的・総合的なバリアフリー施策の推進)  これまで我が国においては、公共交通、まちづくり等それぞれの領域でバリアフリー化の取組みが行われてきたが、すべての人が安全・安心に生活し、社会参加できるようにするためには、自宅から交通機関、まちなかまで、ハード・ソフト両面にわたり連続したバリアフリー環境の整備を推進する必要がある。また、国民一人一人が高齢者、障害者等の困難を自らの問題として認識し、その社会参加に積極的に協力する「心のバリアフリー」を推進することも求められる。 (注1)床面の地上面からの高さが30cm以下で乗降口の段差が無く、車いすスペースや車いすが通るのに十分な幅の通路が確保されているなど、車いすのまま乗降できる仕様のバス (注2)車いすや寝台(ストレッチャー)のまま乗降できるリフト等を備えた専用のタクシー (注3)一般に、要介護者、障害者等であって単独では公共交通機関を利用することが困難な移動制約者等を対象に行われる個別的なサービスをいう。 (注4)「継ぎ目のない」の意味 (注5)あらゆる情報機器が広帯域ネットワークで結ばれることにより、「いつでも、どこでも、何でも、だれでもつながるネットワーク」(ユビキタス・ネットワーク)の利活用環境を形成する情報通信技術(ICT) (注6)地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術