(2)空港整備の推進 1)東京国際空港(羽田)の整備 (ア)東京国際空港(羽田)の現状  東京国際空港(羽田)と全国48空港との間には、1日約400往復(平成17年8月ダイヤ)のネットワークが形成され、国内線で年間約5,905万人(16年度定期便実績)の人々が利用している。  首都圏における国内航空交通の中心としての機能を将来にわたって確保するとともに、航空機騒音問題の抜本的解消を図るため、東京国際空港(羽田)は昭和59年以来、東京都が造成した羽田沖廃棄物埋立地に沖合展開を行ってきた。平成16年12月には第3期計画の最終段階となる第2旅客ターミナルの供用を開始し、現在は同ターミナルの拡張事業等を実施している。  これらにより、同空港の発着枠は拡大されてきたが、国内航空需要の伸びは著しく、現在定期便に使用しうる810回/日の発着枠はすべて使用しており、既に能力の限界に達している。 図表II-5-1-10 東京国際空港(羽田)の離発着回数 (イ)東京国際空港(羽田)の再拡張事業  再拡張事業は、首都圏における航空需要の増大に早急に対応するため、東京国際空港(羽田)に新たに4本目の滑走路等を整備し、年間の発着能力を現在の29.6万回から40.7万回に増強して、発着容量の制約の解消、多様な路線網の形成、多頻度化による利用者利便の向上を図るとともに、将来の国内航空需要に対応した発着枠を確保しつつ国際定期便の受入れを可能とするものであり、平成16年度から事業化が認められている。  滑走路整備事業については、平成17年3月に設計・施工一括発注方式により入札を行った結果、15社異工種建設工事共同体(JV)が落札し、工事請負契約を行った。これにより、滑走路の構造は埋立・桟橋組合せ工法に決定した。17年度は、同JVが実施設計を行うとともに、国が環境影響評価、漁業者との調整等の手続を実施している。  また、旅客・貨物ターミナル、エプロン等の国際線地区整備事業については、PFI手法による検討や手続を進めており、平成17年7月に事業者公募を開始した。 図表II-5-1-11 東京国際空港(羽田)再拡張概略図 (ウ)東京国際空港(羽田)の国際化  東京国際空港(羽田)は国内線の、成田国際空港は国際線のそれぞれ拠点空港であることを基本としつつ、東京国際空港(羽田)の有効活用を図る観点から、同空港の国際化を実施してきている。  深夜早朝時間帯での国際旅客チャーター便については、ソウル、グアム行きを中心に運航便数が増加しており、平成16年度には942便の運航があった。また、15年11月から開始された昼間時間帯における羽田-金浦(ソウル)間の国際旅客チャーター便については、旅客数が17年7月に累計100万人を突破し、同年8月より1日4便から8便に増便するなど、日韓の交流拡大に寄与している。 2)成田国際空港の整備  成田国際空港(平成16年3月まで新東京国際空港)は、昭和53年の開港以来日本の表玄関として重要な役割を果たしてきたが、現時点でその処理能力がほぼ限界に達しており、強い増便・新規乗入要請に対応できない状況となっている。現在の暫定平行滑走路(2,180m)では使用機材の制限等があることから、更に増大する国際航空需要に対応するため、同滑走路の2,500m化は喫緊の課題である。  このような中、平成17年7月に成田国際空港株式会社から用地取得の見通しが立たないとの報告を受け、地元自治体からのおおむねの理解を得て、同年8月、国は未買収地を避け北側に平行滑走路を延長することを同社に指示した。国と成田国際空港株式会社は、地元との協議を進め、北伸による平行滑走路の2,500m化の早期実現、発着回数の更なる増加に取り組んでいる。  一方、平成16年4月に新東京国際空港公団から全額国出資の特殊会社に移行した成田国際空港株式会社については、国際競争力のある自立的な経営主体の確立及び空港経営の一層の効率化を図ることにより、利用者の負担軽減や利便性向上の実現に取り組んでおり、17年10月より航空機の騒音性能に応じた着陸料が新たに設定され、全体として平均約20%引き下げられた。 図表II-5-1-12 成田国際空港の施設計画 図表II-5-1-13 成田国際空港における発着回数・旅客数 3)首都圏における国際拠点空港機能の更なる強化に向けて  平行滑走路等の整備により成田国際空港の容量を拡大しても、将来増大する国際航空需要に対応できなくなることが考えられる。このため、東京国際空港(羽田)の再拡張後においては、将来の国内航空需要に対応した発着枠を確保しつつ、おおむね3万回程度の国際定期便の受入れを可能とすることとしている。 4)関西国際空港二期事業の推進  関西国際空港は、平成6年9月の開港以来、航空旅客数が延べ2億人に達するなど、我が国の国際拠点空港として重要な役割を果たしているが、今後の関西圏における航空需要の増大に適切に対応するため、8年度から2本目の滑走路を整備する二期事業を進めている。  二期事業の施設整備については、平成16年12月の財務・国土交通両大臣間合意において、2本目の滑走路を供用するために必要不可欠なものに限定し、19年に「限定供用」を図ることとされたが、17年10月には2本目の滑走路の起工式が行われるなど、現在、整備を着実に推進している。これにより、関西国際空港は、我が国で唯一の「複数滑走路+24時間運用」という国際標準の国際拠点空港となり、アジアを中心とした海外からの玄関口として、航空需要の増大に適切に対応することが可能となる。  また、関西国際空港株式会社は、平成16年度決算において、開港以降初めて経常黒字を達成するなど、一層の経営改善を進めており、今後も安定的な経営基盤を一日も早く確立するよう努めるとともに、同空港が国際拠点空港としての機能を十全に発揮するよう、関係地方公共団体及び民間と一体となって、集客・利用促進・就航促進に向けた更なる努力を行うこととされている。 図表II-5-1-14 関西国際空港二期事業の進捗状況 5)中部国際空港の現状  平成17年2月17日に国際拠点空港として開港した中部国際空港は、中部圏の経済力を背景とした航空需要に応えるべく整備され、旅客・貨物共に国際線を中心に利用状況は好調である。 図表II-5-1-15 中部国際空港開港後の利用状況 6)一般空港等の整備  一般空港等については、離島を除いて新設を抑制するとともに、ハード・ソフトの施策の組合せや既存空港の十分な活用を中心とする質的充実に重点を移している。平成17年度は10空港の滑走路延長事業等を継続して推進するとともに、新規事業として新石垣空港の整備に着手するほか、既存空港の機能の保持等を実施している。  さらに、滑走路新設・延長に係る新規事業については、透明性向上の観点から国土交通省が空港整備の指針を明示し、整備主体が需要・必要性の十分な検証、空港計画の十分な吟味、費用対効果分析の徹底等を行い、真に必要なものに限って事業化することとしている。また、構想・計画段階におけるPI(パブリック・インボルブメント)(注)手続等を平成15年度より試行している。 7)航空サービスの高度化  今後の空港整備については、航空輸送サービスの質や利用者にとっての使いやすさといった観点から、乗継ぎの円滑化や旅客ターミナル施設の充実等の方策を積極的に推進する必要がある。このため、「航空サービス高度化推進事業」として、就航率の向上等既存空港の機能の高度化や空域・航空路の抜本的再編等運航効率の向上を推進するとともに、重点戦略の展開、物流機能の高度化、ユニバーサルデザインの推進、空港を核とした観光交流の促進に取り組んでいる。 (注)施策の立案や事業の計画・実施等の過程で関係する住民・利用者や国民一般に情報を公開した上で、広く意見を聴取し、それらに反映すること