第4節 産業の再生・活性化 1 鉄道関連産業の動向 (1)鉄道の動向 1)鉄道事業の動向  平成16年度の鉄道旅客の輸送人員については、少子高齢化の進展等厳しい事業環境の中、自然災害の影響もあり、前年度に比べ全体として減少した。JRの新幹線輸送については、16年3月の九州新幹線の開業や東海道・山陽新幹線のダイヤ改正等に伴い、新幹線全体では増加しているが、同年10月の新潟県中越地震の影響により、上越新幹線は減少した。一方、在来線における通学旅客や定期外旅客の減少等に伴い、JR全体としては減少している。また、JRを除く民鉄についても、新線開業等で一部では増加も見られたが、全体としては減少している。  鉄道貨物の輸送トン数については、平成16年度は自動車部品や積合せ貨物(注1)等が前年を上回ったものの、新潟県中越地震の影響により信越線及び上越線が長期にわたり不通となったこと、16年7月の新潟地区における局地的大雨、17年1月以降の上越・北日本各地の豪雪等、自然災害の影響を強く受け、輸送障害等が多発したことから、コンテナ貨物の輸送量は前年度を下回った。また、車扱(しゃあつかい)(注2)を含めた全体の輸送量も前年度を下回っている。  一方、交通運輸分野における規制緩和が進む中、各鉄道事業者によるサービス改善への取組みが行われている。快適で安心な車内空間確保の観点から、平成17年春より首都圏の主要鉄道事業者が女性等に配慮した車両を導入し、利用者の理解と協力を背景に輸送サービスの一環として着実に定着しつつあり、その後も新規路線への拡充が続いている。ICカード乗車券については、平成18年1月にJR西日本の「ICOCA」とスルッとKANSAI(注3)の「PiTaPa」が相互利用を開始し、同月にはJR東日本が携帯電話機に従来の「Suica」の機能等を付加した「モバイルSuica」サービスを開始した。このような利便性向上への取組みを背景に、ICカード乗車券の急速な普及が見られる。また、鉄道貨物輸送においても、荷主ニーズに対応するためITを活用した情報システムの整備等の取組みが行われている。 2)JRの完全民営化に向けた取組み  昭和62年4月の国鉄の分割・民営化により誕生したJR各社については、「できる限り早期に純民間会社とする」ことが求められていた。このうちJR東日本、JR東海及びJR西日本のJR本州三社は、既に「旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律」の適用対象から除外され、完全民営化された。ただし、JR各社が国鉄改革の中で誕生したという経緯を踏まえ、当分の間、国鉄改革の趣旨を踏まえた事業運営を確保するための措置がとられている。  独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が保有するJR本州三社の株式については、既にJR東日本及びJR西日本の各株式の売却が完了している。JR東海の株式は、平成17年7月に60万株を売却しており、今後、株式市場の動向等を踏まえ、残株28.6万株(発行済み株式の約12.8%)を売却する予定である。  JR北海道、JR四国、JR九州及びJR貨物については、経営基盤の確立等完全民営化のための諸条件の達成に向け、増収努力や経費節減等の取組みが行われている。 (注1)宅配荷物や雑貨などの小口貨物を集荷した運送事業者を荷主として取り扱う貨物 (注2)貨車を1車貸し切って輸送する方式であり、特に大量輸送の石油などの産業物資輸送に力を発揮している。 (注3)関西圏を中心とした交通事業者(平成17年11月現在51事業者)によって構成された協議会が運営する共通カードシステム