(5)土砂災害対策  我が国では、集中豪雨や地震等に伴う土石流、地すべり、がけ崩れ等の土砂災害が、過去10年(平成8〜17年)の年平均で約1,000件発生しており、国民の生活に多大な被害を与えている。さらに、都市化の進展に伴い宅地が都市域周辺の山麓部まで広がり、土砂災害危険箇所が増加傾向にある。そのため、土砂災害の防止対策として、砂防えん堤等の施設整備を実施しているが、全国に約21万ある土砂災害危険箇所(注)に対する整備率は約2割と未だ低い水準にあり、警戒避難等のソフト対策を含め様々な施策が必要である。加えて、平成16年には統計開始以来最多の土砂災害が発生したことを受けて、「土砂災害対策検討会」を開催し、17年3月に提言が取りまとめられた。国土交通省では、この提言に基づき各種施策を推進している。 図表II-6-1-12 過去10年(平成8〜17年)の土砂災害の発生件数 平成17年台風第14号の豪雨による土砂災害(鹿児島県垂水市) 図表II-6-1-13 土砂災害対策検討会の提言における主な施策 1)根幹的な土砂災害対策  流域全体の安全を確保する水系砂防、地すべりによる河道閉塞とその決壊による洪水等の被害を防ぐ地すべり対策など、広域的な国土保全のための砂防事業を推進している。 2)土砂災害発生地域の緊急防災対策  集中豪雨等により激甚な災害を受けた地域等や災害のおそれの高い地域について、再度災害防止等を目的として砂防激甚災害対策特別緊急事業等により土砂災害対策を実施しており、平成17年度は、福井県美山町等183箇所で実施している。 3)都市山麓における土砂災害対策  都市域における土砂災害に対する安全性を高め、緑豊かな都市環境を創出するため、市街地に隣接する山麓斜面に一連の樹林帯(グリーンベルト)を形成し、在来植生を生かしつつ斜面の安全を図る緑の斜面工法を推進している。平成17年度は、六甲地区(兵庫県)等15地区において実施している。 4)土砂災害対策3つの緊急プロジェクト  平成15年7月の梅雨前線豪雨では、熊本県水俣市等において大規模土石流により、死者が23名を数える大災害が発生した。これを契機に、全国で3箇年をめどに、1)危険箇所の認知、2)土砂災害情報の伝達、3)警戒避難の更なる推進を図っている。 5)土砂災害防止法の推進 (ア)土砂災害警戒区域等の指定の推進  土砂災害防止工事等によるハード整備と合わせて、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(土砂災害防止法)」により、土砂災害が発生するおそれのある土地の区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、著しい土砂災害が発生するおそれのある土地の区域において、一定の開発行為の制限、建築物の移転勧告等のソフト対策を講じている。さらに、平成17年7月には、同法を一部改正し、土砂災害ハザードマップ等による周知の徹底と災害時要援護者関連施設への土砂災害情報の伝達方法を市町村地域防災計画に規定するなど、警戒避難体制の整備の強化を図っている。全国で土砂災害警戒区域等の指定等に必要な基礎調査を実施しており、同年12月末現在広島県等において7,117箇所が指定されている。 (イ)危険住宅の移転の促進  崩壊の危険があるがけ地に近接した危険住宅については、「がけ地近接等危険住宅移転制度」の活用等により移転が促進されている。平成16年度は、この制度により危険住宅66戸が除却され、危険住宅に代わる住宅49戸が建設された。 (注)ここでいう土砂災害危険箇所のうち、土石流危険渓流及び急傾斜地崩壊危険箇所については、被害想定区域内に人家5戸以上等ある渓流(箇所)を対象としている。