第I部 地域の活力向上に資する国土交通行政の展開 

第1節 地域に対する国民の意識

 国土交通省では、国民が、自分の住んでいる地域の現在の状況や将来の見通しについてどのように感じているのか、また、地域格差についてどのように感じているのか、ということについて、平成18年12月に意識調査を実施した(注1)
 問1として、自分の住んでいる地域の現状についてどう感じるか尋ねたところ、「変わらない」とする回答が約6割を占め、「以前と比べ、良くなった」、「以前と比べ、悪くなった」とした回答の割合はそれぞれ16.9%にとどまった。また、16大都市(注2)、その他の市、町・村という都市規模別で見ても、回答の傾向に大きな違いは見られなかった。
 
図表I-1-1-3 自分の住んでいる地域の現状についてどう感じるか

自分の住んでいる地域の現状について質問したところ、以前と比べ、悪くなったと回答した人の割合は16.9%、変わらないと回答した人の割合は60.3%、以前と比べ良くなったと回答した人の割合は16.9%であった。
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 問2、問3として、自分の住んでいる地域について、満足している点及び不満な点を尋ねた(複数回答)。
 満足している点としては、全体では、「買い物に便利である」、「自然が豊かである」、「公共交通の便が良い」、「地域の人々のつながりが良好である」、「治安が良い」、「道路が整備されている」が上位を占めた。しかし、これらの回答の傾向については、都市規模別で大きく異なっている。16大都市では48.2%と最も多い回答を得た「公共交通の便が良い」が、その他の市では26.2%、町・村ではわずか12.1%にとどまっており、地域における公共交通の利便性の格差が反映されているものと考えられる。その一方で、町・村では、「自然が豊かである」、「治安が良い」、「地域の人々のつながりが良好である」が上位を占め、このような点で都会より暮らしやすい面があることが示されている。
 
図表I-1-1-4 自分の住んでいる地域について満足している点(複数回答)

自分の住んでいる地域について、満足している点を質問したところ、買い物に便利であると回答した人の割合は33.3%、自然が豊かであると回答した人の割合は32.0%、地域の人々のつながりが良好であると回答した人の割合は22.3%、治安が良いと回答した人の割合は21.4%、道路が整備されていると回答した人の割合は19.8%であった。都市規模別にみると、公共交通のべんが良いと回答した人の割合は、16大都市では48.2%、その他の市では26.2%、町、村では12.1%であった。
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 不満な点については、さらに都市規模別の回答傾向に大きな違いが認められる。不満な点として2割以上の人が選んだ選択肢は、16大都市では「自然が少ない」、その他の市では「公共交通の便が悪い」のそれぞれ1つのみであるが、町・村では「経済が停滞している」、「公共交通の便が悪い」、「買い物に不便である」、「医療や福祉の水準が低い」、「雇用の機会に恵まれていない」の5つに上っており、これらの選択肢の回答割合については都市規模別で大きな差がある。
 
図表I-1-1-5 自分の住んでいる地域について不満な点(複数回答)

自分の住んでいる地域について、不満な点を質問したところ、自然が少ないと回答した人の割合は、16大都市では20.7%、その他の市では6.8%、町、村では4.7%であった。公共交通のべんが悪いと回答した人の割合は、16大都市では8.2%、その他の市では21.3%、町、村では29.5%であった。経済が停滞していると回答した人の割合は、16大都市では4.6%、その他の市では12.9%、町、村では30.9%であった。
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 引き続き問4として、自分の住んでいる地域の将来についてどう思うか尋ねたところ、将来について「とても不安を感じる」又は「やや不安を感じる」と回答した割合は、全体では30.2%であったが、町・村では42.3%と、より高い割合を示した。
 
図表I-1-1-6 自分の住んでいる地域の将来について不安を感じるか

自分の住んでいる地域の将来について質問したところ、とても不安を感じると回答した人の割合は、全体では5.1%、町、村では10.7%であった。やや不安を感じると回答した人の割合は、全体では25.1%、町、村では31.5%であった。
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 問5として、自分の住んでいる地域の将来について「とても不安を感じる」又は「やや不安を感じる」と回答した人に対し、どのような点で不安を感じるか尋ねたところ(複数回答)、全体では「高齢化が進む」、「少子化が進む」、「人口が減少する」という人口動向に関する問題が上位を占めた。これらの項目については、いずれも、都市規模が小さくなるほど不安に感じる人の割合が高くなっており、特に「人口が減少する」については、16大都市では10.8%の回答にとどまるが、その他の市では32.3%、町・村では38.1%となっている。このような差は、都市規模別の人口動向の現時点での違いを反映したものと考えられる。
 
図表I-1-1-7 自分の住んでいる地域の将来について不安を感じる点(複数回答)

自分の住んでいる地域の将来について不安を感じると回答した人に対し、どのような点で不安を感じるか質問したところ、高齢化が進むと回答した人の割合は69.5%、少子化が進むと回答した人の割合は42.6%、人口が減少すると回答した人の割合は28.8%であった。
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 問6として、大都市と地方との間等での地域格差が最近拡大していると考えるかについて尋ねると、地域格差が「拡大している」又は「やや拡大している」との回答が3分の2近くを占めた。
 
図表I-1-1-8 地域格差は最近拡大していると考えるか

大都市と地方との間等で地域格差が最近拡大しているか質問したところ、拡大していると回答した人の割合は32.6%、やや拡大していると回答した人の割合は33.1%であった。
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 この結果について、問1の回答との関係から見ると、地域格差の拡大を意識する割合は、自分の住んでいる地域が「以前と比べ、悪くなった」と感じると回答している人では75.8%と高くなっているが、「変わらない」又は「以前と比べ、良くなった」と感じると回答した人でも6割以上を占めている。
 
図表I-1-1-9 地域の現状に関する認識と地域格差の意識との関係

自分の住んでいる地域が以前と比べ悪くなったと回答した人では、地域格差が拡大していると回答した人の割合は43.2%、やや拡大していると回答した人の割合は32.6%であった。自分の住んでいる地域が以前と比べ良くなったと回答した人では、地域格差が拡大していると回答した人の割合は31.1%、やや拡大していると回答した人の割合は31.6%であった。
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 同様に、問4の回答との関係について見ると、地域格差の拡大を意識する割合は、自分の住んでいる地域の将来に「不安を感じる」とする人では7割以上に達するが、「不安を感じない」とする人でも6割弱に上っている。
 
図表I-1-1-10 地域の将来に関する認識と地域格差の意識との関係

自分の住んでいる地域の将来について不安を感じると回答した人では、地域格差が拡大していると回答した人の割合は44.3%、やや拡大していると回答した人の割合は32.8%であった。自分の住んでいる地域の将来について不安を感じないと回答した人では、地域格差が拡大していると回答した人の割合は27.4%、やや拡大していると回答した人の割合は31.4%であった。
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 問7として、地域格差が「拡大している」又は「やや拡大している」と考えると回答した人に対し、どのような点で地域格差が拡大していると考えるか尋ねたところ(複数回答)、「所得水準」、「雇用情勢」、「医療・福祉水準」、「公共交通の利便性」が上位を占めている。
 
図表I-1-1-11 地域格差が拡大していると考える点(複数回答)

地域格差が拡大している、又はやや拡大していると回答した人に対し、どのような点で地域格差が拡大していると考えるか質問したところ、所得水準と回答した人の割合は67.2%、雇用情勢と回答した人の割合は60.7%、医療、福祉水準と回答した人の割合は42.3%、公共交通の利便性と回答した人の割合は35.9%であった。
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 さらに、問8として、地域格差が「拡大している」又は「やや拡大している」と考えると回答した人に対し、地域格差が拡大していることについてどう思うか尋ねたところ、「あまり望ましくはない」又は「望ましくない」とする回答が約6割であった。
 
図表I-1-1-12 地域格差の拡大についてどう思うか

地域格差が拡大している、又はやや拡大していると回答した人に対し、地域格差が拡大していることについてどう思うか質問したところ、あまり望ましくないと回答した人の割合は37.2%、望ましくないと回答した人の割合は21.1%であった。
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 問9として、活力ある地域を実現するために国が積極的に取り組むべきだと思う分野について尋ねると(複数回答)、全体では、「地域産業の活性化」、「地域医療・福祉の充実」、「教育体制の充実」が上位を占めた。都市規模別に見ると、町・村では、「地域産業の活性化」、「産業の新規立地」、「中心市街地の活性化などのまちづくり」への取組みを求める回答が相対的に高くなっており、地域の経済的な活性化やにぎわいを望む意向がより強いことがうかがわれる。
 
図表I-1-1-13 活力ある地域の実現のために国が取り組むべきだと思う分野(複数回答)

活力ある地域を実現するために国が積極的に取り組むべき分野について質問したところ、地域産業の活性化と回答した人の割合は42.3%、地域医療、福祉の充実と回答した人の割合は37.7%、教育体制の充実と回答した人の割合は25.4%であった。
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 同様に、問10として、都道府県や市町村が積極的に取り組むべきだと思う分野について尋ねると(複数回答)、「地域産業の活性化」、「地域医療・福祉の充実」が上位を占めた。この設問でも、町・村では、「地域産業の活性化」、「産業の新規立地」について望む回答が相対的に高くなっている。
 
図表I-1-1-14 活力ある地域の実現のために都道府県や市町村が取り組むべきだと思う分野(複数回答)

活力ある地域を実現するために都道府県や市町村が積極的に取り組むべき分野について質問したところ、地域産業の活性化と回答した人の割合は38.8%、地域医療、福祉の充実と回答した人の割合は32.0%であった。
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 最後に問11として、活力ある地域の実現のために、地域住民自身が今後積極的に取り組むべきだと思う分野について尋ねると(複数回答)、全体では、「子育て支援」、「高齢者との交流・支援」、「防犯・防災活動」が上位を占めた。都市規模別に特徴を見ると、16大都市では「防犯・防災活動」、その他の市では「子育て支援」、町・村では「高齢者との交流・支援」がトップとなっている。また、町・村では、「商店街の活性化などにぎわいのあるまちづくり」と回答する割合が、相対的に高くなっており、にぎわいを望む意向の強さが、ここでもうかがわれる。
 
図表I-1-1-15 活力ある地域の実現のために地域住民自身が取り組むべきだと思う分野(複数回答)

活力のある地域を実現するために地域住民自身が積極的に取り組むべき分野について質問したところ、育児支援や子どもの健全育成などの子育て支援と回答した人の割合は40.5%、高齢者との交流や生活支援と回答した人の割合は38.5%、防犯活動や防災活動など安全、安心への取組みと回答した人の割合は35.7%であった。都市規模別にみると、16大都市では、防犯活動や防災活動など安全、安心への取組みと回答した人の割合が38.7%と最も高く、その他の市では、育児支援や子どもの健全育成などの子育て支援と回答した人の割合が41.4%と最も高く、町、村では、高齢者との交流や生活支援と回答した人の割合が44.3%と最も高かった。
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(注1)平成18年12月7日から10日にかけて、層化副次(二段)無作為抽出法に基づき抽出した全国の満20歳以上の男女2,000人(回収数1,346人)を対象に、個別面接聴取法による調査を実施した。
(注2)東京都区部及び15政令指定市

 

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