第I部 地域の活力向上に資する国土交通行政の展開 

1 人口の動向

(減少局面を迎えた我が国の人口)
 我が国の人口は、戦後、一貫して増加していた。人口増加率で見ると、終戦直後は海外からの引き揚げや第1次ベビーブームに伴い、急激な上昇を示したが、高度経済成長期には、年平均1%程度と安定的に推移した。その後、昭和46年から49年までの第2次ベビーブーム期には年率1.4%程度の高い増加を見せたものの、50年以降、人口増加率は徐々に低下していった。
 平成17年国勢調査による我が国の人口は1億2,777万人で、前回の平成12年国勢調査の1億2,693万人に比べ84万人、0.7%の増加であったが、その増加率は、戦後最も低いものである。さらに、16年10月1日現在の推計人口1億2,779万人と比べると、1万9千人減少しており、我が国の人口は減少局面を迎えたと言える。
 
図表I-1-2-1 我が国の人口増加率と人口の推移

我が国の人口と人口増加率について昭和25年から平成17年までの推移を見ると、人口については平成16年まで一貫して増加していたが、17年は1億2777万人と16年の水準を下回っている。また、人口増加率については、平成16年までは伸び率の低下は見られたもののプラスに推移していたが、17年はマイナスに転じている。
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 都道府県ごとの人口動向を見ると、前回国勢調査(平成12年)からの5年間にかけて、地方圏を中心に32道県で人口が減少しており、前々回(平成7年)から前回までの5年間で人口減少したのが23道県だったのに比べ、人口減少地域が拡大している。一方で、前回国勢調査からの5年間で人口が増加した15都府県について見ると、人口増加率は東京都が4.2%と最も高く、次いで神奈川県が3.6%、沖縄県が3.3%となっている。
 また、前回国勢調査からの5年間にかけて、人口100万以上のすべての市(12市)において人口が増加している一方で、人口が減少した市町村は、平成17年国勢調査時点における全2,217市町村のうち1,603市町村に達し、全体の72.3%を占めている。

(三大都市圏と地方圏の人口の推移)

1)高度経済成長期までの動き
 人口増加率の推移を見ると、戦後ほぼ一貫して、三大都市圏(注1)の方が地方圏(注2)よりも高くなっている。とりわけ昭和30年代初頭から40年代の高度経済成長期にかけては、三大都市圏が年率2%を超える高い水準であったのに対し、地方圏ではマイナスに転じている時期もあるなど伸びておらず、両者の差は著しい。
 このような三大都市圏、地方圏それぞれの人口増加率を、自然増加(注3)率と社会増加(注4)率に分けて見ると、自然増加率については双方とも比較的高い水準で推移しているのに対し、社会増加率については、三大都市圏では年率で1%から1.5%にかけて増加する一方で、地方圏では年率1%程度の減少となっていることが分かる。それは、就職等のため、若年層を中心に年間40万人を超える人口が地方圏から三大都市圏へ移動したことによるものである。
 
図表I-1-2-2 三大都市圏と地方圏における人口と人口増加率の推移

三大都市圏と地方圏における、自然増加率、社会増加率、人口増加率について、昭和25年から平成17年までの、5年期間の推移をみる。自然増加率については、三大都市圏、地方圏ともに、昭和55年頃までは、約1%から1.5%程度と比較的高い伸びを示していたが、それ以降は一貫して減少しており、平成17年の自然増加率は、三大都市圏では約0.2%、地方圏では約マイナス0.01%となっている。また、社会増加率については、三大都市圏ではほとんどの期間でプラスに推移している一方、地方圏では逆にほとんどの期間でマイナスで推移しているが、昭和40年頃から、三大都市圏及び地方圏についての社会増加率のプラス幅、マイナス幅は一貫して縮小傾向にある。よって、人口増加率については、昭和30年代から40年代にかけて、三大都市圏が2%を超える水準であったが、地方圏では1%以下で推移しており、マイナスに転じている年もあった。なお、三大都市圏のほうが地方圏よりおおむね高く推移しているものの、昭和55年頃からは三大都市圏、地方圏ともに1%以下で推移している。
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図表I-1-2-3 三大都市圏と地方圏における自然増加率と社会増加率の推移

三大都市圏と地方圏における自然増加率について昭和25年から平成17年までの5年期間の推移をみると、どちらも年率1%程度で推移している。また、社会増加率については、三大都市圏ではほとんどの期間でプラスで推移している一方、地方圏では逆にほとんどの期間でマイナスで推移している。人口増加率については、三大都市圏のほうが地方圏よりおおむね高く推移している。
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 人口移動の背景として、三大都市圏と地方圏の間の産業構造の違いによって生じた、労働力需給状況の地域間格差があったものと見られる。三大都市圏と地方圏の有効求人倍率の推移を見ると、高度経済成長期には大きな差があった一方で、それ以降、その差は大幅に縮小している。このように、高度経済成長期には、三大都市圏が地方圏に比べ豊富な就業機会を有しており、さらに次項で見るような所得格差もあったことから、地方圏から三大都市圏へ人口が流入したと考えられる。
 
図表I-1-2-4 三大都市圏と地方圏における有効求人倍率の推移

有効求人倍率について昭和40年から平成17年までの推移をみると、ほとんどの年で三大都市圏のほうが地方圏よりも有効求人倍率が高いが、その差は昭和50年以前の頃と比べ、大幅に縮小している。
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2)高度経済成長期以降の動き
 高度経済成長期以降は、三大都市圏と地方圏の人口増加率の差が以前と比べて大幅に小さくなっている。それは、地方圏における産業構造の転換等に伴い、昭和40年代後半になって三大都市圏への人口移動が急激に縮小してきたことによるものである。
 
図表I-1-2-5 各都市圏への転入超過数の推移

各都市圏への転入超過数の推移について、昭和30年から平成17年までの推移をみると、昭和45年頃までは、東京圏、名古屋圏、大阪圏それぞれが、転入超過を示しており、三大都市圏全体で、年間40万人程度の転入超過があった。その後は、昭和50年頃にかけて、転入超過数が急激に減少し、名古屋圏、大阪圏では、昭和50年頃の水準から現在までほぼ横ばいで推移しており、転出超過に転じる年もあった。一方、昭和50年代以降の東京圏では、以前よりも転入超過幅は小さくなっているものの、平成6,7年にいったん転出超過となるまで、転入超過が続いており、また平成12年頃から、年間10万人程度の転入超過の拡大が見られている。
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 三大都市圏のいずれについて見ても、昭和40年代後半における転入超過数の急激な減少が確認できる。ただし、東京圏においては、名古屋圏、大阪圏と異なり、以前より小幅ではあるが、バブル崩壊後の平成6、7年にいったん転出超過となるまで、転入超過が続いており、最近では、バブル期と同じような転入超過の拡大が再び見られる。これについて、最近の東京圏における転出入者数の推移を見ると、東京圏への転入者数はほぼ横ばいである一方、東京圏からの転出者数が減少していることが分かる。
 
図表I-1-2-6 東京圏における転出入数の推移

東京圏における転出入数について、昭和30年から平成17年までの推移をみると、転出数については昭和40年代後半から減少傾向にある。また、転入数については昭和45年頃から平成6年頃まで減少していたが、その後転入者数はほぼ横ばいで推移している。
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 また、高度経済成長期以降、三大都市圏、地方圏ともに、自然増加率の継続的な低下に伴い、人口増加率自体が低下してきており、最近では、総人口の減少に先がけて、地方圏において人口減少に転じた。
 地方圏の自然増加率は三大都市圏よりも低くなっているが、その要因について見ると、出生率(注5)では、両者の間で顕著な差がない一方、死亡率(注6)では、地方圏が三大都市圏よりもおおむね高くなっていることが分かる。出生率に顕著な差が見られないのは、合計特殊出生率(注7)は地方圏の方が高いものの、若年女性の人口の割合が地方圏で少なくなっていることが要因だと考えられる。また、地方圏において死亡率が相対的に高いのは、老年人口割合が高いことによるものである。
 
図表I-1-2-7 都道府県別出生率と死亡率(平成17年)

ここでの出生率は、人口1,000人当たりの出生数、死亡率は、人口1,000人当たりの死亡数を指す。平成16年の出生率は、10人を超えている沖縄県を除き、どの都道府県も8人程度を示しているが、死亡率は、地方圏が三大都市圏よりもおおむね高くなっている
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(三大都市圏及び地方圏内部での人口動向)
 三大都市圏と地方圏内部での人口動向について見ると、それぞれ次のような動きが見られる。
 三大都市圏においては、昭和40年代から50年代にかけて、ドーナツ化現象が進み、東京23区等では、人口は転出する一方だった。しかし、最近では、地価下落等による都心部におけるマンション供給の著しい増加等を背景に、東京23区内への転入が超過しており、その数も年々増加している。同様の現象は名古屋市、大阪市においても見られ、名古屋市では14年より4年連続、大阪市では13年より5年連続で転入超過が進み、三大都市圏において「都心回帰」が進んでいると言える。
 
図表I-1-2-8 東京23区・名古屋市・大阪市における転出入超過数の推移

東京23区、名古屋市、大阪市における転出入超過数について、昭和35年から平成17年までの推移をみると、いずれの都市も昭和40年頃から昭和50年代にかけて、転出超過が急激に進んでいたが、その後しだいに転出超過幅は小さくなり、平成10年前後から転入超過へと推移している。
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 また、地方圏においては、地域ブロック(注8)の中枢的な機能を担う都市の求心力が高まっている状況が見られる。例えば、福岡県の人口の九州ブロック総人口に占める割合が、昭和25年の27.1%から、平成17年には34.3%まで上昇しており、中枢都市である福岡市の拠点性の向上に伴う人口動向だと考えられる。
 
図表I-1-2-9 県人口の地域ブロック総人口に占める割合の推移

東北ブロック、中国ブロック、九州ブロックにおける中核的な県の人口の地域ブロック総人口に占める割合について昭和25年から平成17年までの推移をみると、東北ブロックでは宮城県の割合が18.4%から24.5%に、中国ブロックでは広島県の割合が30.8%から37.5%に、九州ブロックでは福岡県の割合が27.1%から34.3%に上昇している。
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(人口減少市町村と人口増加市町村の違い)
 人口が近年大きく増減した市町村について、その状況を見ることとする。
 平成17年国勢調査において前回12年国勢調査より人口が5%以上減少した市町村は、全市町村の3割弱の654に達した。国土交通省では、このような人口減少率5%以上の市町村のうち、人口規模や所在都道府県を考慮して30市町村を選んで(注9)アンケート調査を行った。
 一方で、平成12年から17年国勢調査の間に人口が減少した32道県にありながら、同期間に人口が5%以上増加した市町村が33(注10)あった。国土交通省では、これら33市町村に対してもアンケート調査を行った。
 両者について人口の年齢別構成割合を見ると、高齢化の進行状況が大きく異なることが分かる。
 平成17年国勢調査によれば、全国の総人口のうち老年(65歳以上)人口が占める割合は20.1%であるが、人口減少30市町村の老年人口割合はすべてこれを上回り、そのうち22市町村では30%を超えている。
 これに対し、人口増加33市町村では、老年人口割合が全国の割合を超えているのは6市町村のみである。一方で、年少(15歳未満)人口割合について見ると、全国の割合13.7%を下回るのは2市村のみであり、人口増加33市町村では概して人口構成が若いことが分かる。これらの市町村のアンケート回答によれば、人口増加の要因として、宅地開発や県庁所在市等の中心的な都市からの近接を挙げるところが大半であり、子育て世代の転入等が、このような人口の年齢構成の背景になっているものと推測される。
 
図表I-1-2-10 人口の年齢別構成割合の比較

平成17年の国勢調査によると、全国では、15才未満の人口の割合は13.7%、15から64才の人口の割合は65.8%、65才以上の人口の割合は20.1%である。人口増加33市町村の平均では、15才未満の人口の割合は16.5%、15から64才の人口の割合は65.7%、65才以上の人口の割合は17.5%である。人口減少30市町村の平均では、15才未満の人口の割合は11.8%、15から64才の人口の割合は55.0%、65才以上の人口の割合は33.2%である。
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(注1)本節においては、特記しない限り、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、名古屋圏(岐阜県、愛知県、三重県)、大阪圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)
(注2)三大都市圏以外の道県
(注3)出生数と死亡数の差
(注4)転入数と転出数の差
(注5)人口1,000人当たりの出生数。粗出生率、普通出生率とも呼ばれる。
(注6)人口1,000人当たりの死亡数。粗死亡率、普通死亡率とも呼ばれる。
(注7)合計特殊出生率(期間合計特殊出生率)とは、その年次の15〜49歳までの女子の年齢別出生率を合計したもので、1人の女子がその年次の年齢別出生率で一生の間に出産すると仮定した場合の子どもの数に相当する。
(注8)本節において、地域ブロックの分け方は、以下のとおりとする。
東北:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、北関東・甲信:茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県、南関東:埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、北陸:新潟県、富山県、石川県、福井県、東海:静岡県、岐阜県、愛知県、三重県、近畿:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、中国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、四国:徳島県、香川県、高知県、愛媛県、九州:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
(注9)5万人以上、5〜3万人、3〜2万人、2〜1万人、1万〜5千人、5千人未満の6つの階層別に5市町村ずつ人口減少率の高い順に選定した。ただし、平成17年国勢調査時以降において合併により市町村域が大きく変化した市町村は除くとともに、30市町村のうち同一都道府県の市町村は1つだけとなるように選定した(例えば、5万人以上の階層で、A県の市町村が選定された場合、他の階層ではA県の市町村は対象としない。)。
(注10)合併により市町村域が大きく変化した市町村を除く。

 

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