第II部 国土交通行政の動向 

コラム・事例 「荒廃するアメリカ」と日本

 1980年以前、米国では道路の維持管理に十分な予算が投入されず、1980年代初頭には米国の道路施設の多くが老朽化し、「荒廃するアメリカ」と呼ばれるほど、劣悪な状態に陥っていました。1980年代になって、財源を増強し、維持修繕に力を入れたことにより、欠陥橋梁の数は減少してきましたが、2004年(平成16年)の時点でも全体の30%弱に当たる約17万橋の欠陥橋梁が全米に存在しており、未だに「荒廃するアメリカ」から抜け出せないでいます。
 


1980年代の「荒廃するアメリカ」
 


マイアナス橋の落橋(1983年)

 日本では、1960年代の高度経済成長期に道路整備が急ピッチに進められました。ニューディール政策の時代から整備が本格化した米国と比較すると、日本は米国に30年遅れていると言えます。日本でも、適切な管理を怠ると、2010年代には「荒廃するアメリカ」と同じ状態になることが懸念されます。
 


日米の橋梁の建設年の比較 日米の橋梁の建設ねんを比較すると、米国の橋梁が1920年から1940年にかけて多く建設され、1980年代に高齢化したのに対し、日本の橋梁は1950年から1970年にかけて多く建設されており、米国より30年遅い2010年代に高齢化する。

 我が国では、建設後50年以上経過した橋梁等の道路施設が今後急増し、修繕等により大きな負担が生じることが懸念されます。道路施設は、損傷を放置すると後年に大規模な修繕工事等大きな負担が生じるため、米国での教訓を生かしつつ、予防保全(損傷が顕在化する前の軽微なうちに対策を行うこと)を実施することでライフサイクルコスト(生涯費用)の縮減に努めていくことが必要です。
 


建設後50年以上の橋梁の推移 建設後50年以上の橋梁の全体に対する割合は、2006年度が6%、2016年度が20%、2026年度が47%である。

 

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