第II部 国土交通行政の動向 

(2)海洋の観測・監視

 海洋は、温室効果ガスであるCO2を吸収し、熱を貯えることによって、地球温暖化を緩やかにしている。また、海洋変動は、台風の発生・発達や異常気象等、気象にも深く関わっている。このため、地球環境問題への対応には、海洋の状況を的確に把握することが重要である。
 地球全体の海洋変動を即時的に監視・把握するために、国土交通省は関係省庁等と連携して、世界気象機関(WMO)等による国際協力の下、海洋の内部を自動的に観測する装置(アルゴフロート)を全世界の海洋に展開するアルゴ計画を推進している。
 
図表II-7-7-1 アルゴ計画における観測の概要

アルゴ計画とは、海洋気象観測船等により、海洋に投入されたアルゴフロートが、およそ10日ごとに水深約2,000メートルまで効果・浮上を繰り返し、その際に測定される海面から水深約2,000メートルまでの水温等を、衛星を経由して自動的に通報するシステムである。過去1ヶ月にデータを通報した数は平成18年10月31日現在、全世界で2,409個であり、このうち、日本のフロートは350個である。

 気象庁では、観測船、アルゴフロート、衛星等による様々な観測データを収集・分析し、地球環境に関連した海洋変動の現状と今後の見通し等を総合的に診断する「海洋の健康診断表」を、ホームページを通じて提供している。
 
図表II-7-7-2 気象庁ホームページで公開している「海洋の健康診断表」の例

2005年の世界のねん平均海面水温の平年差は、プラス0.21度で、統計を開始した1891年以降では1998年に次いで2番目に高い値になっている。また、全球のねん平均海面水温は、長期的には100年あたり0.5度の割合で上昇しているが、特に1990年代中頃以降、高温となる年が頻出している。

 海上保安庁では、アルゴフロートのデータを補完するシステムとして、伊豆諸島周辺海域における黒潮変動を海洋短波レーダーにより常時監視・把握し、インターネットにより公開するとともに、我が国の海洋調査機関によって得られた海洋データを収集・管理し、関係機関及び一般国民へ提供している。

 

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