3 産業構造・産業立地の状況3 産業構造・産業立地の状況  地域の所得や雇用の状況は、地域における産業のあり方と大きく関係するものである。ここでは、地域ブロック別の産業構造及び最近の産業立地の動向について分析を行う。 (地域の産業構造)  地域ブロック別の産業別就業者構成比の推移について見ると、第一次産業就業者数の比率は、平成12年から17年までに2地域で上昇に転じるなど、これまでの低下傾向に歯止めがかかったことがうかがえる。ただし、就業者の年齢別構成比を見ると、定年退職ということが基本的にない農林水産業の特質もあって、65歳以上の割合が全体の約5割を占めており、第二次産業及び第三次産業の約7%と比べて、圧倒的に高齢化が進んでいる。また、同期間中に、第二次産業就業者数の比率はすべての地域で低下する一方で、第三次産業就業者数の比率はすべての地域で上昇しており、以前と同様の動きが続いている。 図表I-1-2-14 産業別就業者数構成比の推移(第一次産業、第二次産業、第三次産業)  平成17年の構成比を見ると、東北と四国において第一次産業就業者数の比率が比較的高いほか、北関東・甲信、北陸、東海では第二次産業就業者数の比率が30%超と際立っており、また、北海道と南関東では第三次産業就業者数の比率が70%を超えているなど、地域ごとに特徴が見られる。 図表I-1-2-15 地域ブロック別就業者数構成比(平成17年)  同様に、県内総生産について地域ブロック別に産業別構成比を見ると、その推移は、産業別就業者構成比とおおむね同じような傾向を示している。しかし、その構成比は、就業者構成比に比べて、第一次産業の比率が低く、第二次産業と第三次産業の比率が相対的に高い傾向にあり、特に北関東・甲信と東海においては、第二次産業の占める割合が30%台後半と、他の地域より際立って高い。 図表I-1-2-16 地域ブロック別県内総生産構成比(平成16年)  都道府県別に県内総生産の産業別構成比を見ると、第一次産業のシェアが高いのは北海道や東北、九州等の道県であり、一方、第二次産業のシェアが高い県は北関東や東海に集中している。これに対し、第三次産業のシェアが高い都道府県は点在しているが、東京、大阪のような大都市圏の中心や、宮城、福岡のような地方中核都市圏を有する県のほか、第二次産業のシェアの低い県で相対的に高くなっている傾向が見られる。 図表I-1-2-17 都道府県別の産業別県内総生産構成比 (産業構造と地域ブロック内での機能分担)  県内総生産で見た都道府県別の産業別構成比の違いは、地域ブロック内での機能分担を反映している面もあると思われる。  首都圏を例にとると、東京は第三次産業構成比が86.1%と全国で最も高く、その一方で、茨城、栃木、群馬は第二次産業構成比が30%台後半と全国平均の25.7%より大幅に高い反面、第三次産業は60%前後と全国平均の73.1%をかなり下回っている。また、山梨もこれら3県と同様の傾向を示し、埼玉、神奈川、千葉は第二次、第三次産業とも全国平均並みである。  これは、東京が大手企業の本社機能を始めとする中枢管理機能を担うのに対して、東京からの交通アクセスが良く、地価も比較的低い北関東三県や山梨には製造機能が集積しているということであり、首都圏内部で機能分担がなされていると見ることができる。 図表I-1-2-18 首都圏の産業別県内総生産構成比 (日本経済における製造業の位置付け)  第二次産業の中核をなす製造業は、その国内総生産(GDP)や就業者に占める割合は約2割であるが、産業としての裾野が広く、製造業が事業活動を行うことによって流通業等の他分野における付加価値額の増加が見込まれるなど、その波及効果も大きいため、日本経済において依然として重要な位置付けを有している。 図表I-1-2-19 製造業・広義サービス業の波及効果についての試算  さらに、製造業の労働生産性の伸びは全産業の労働生産性の伸びを大きく上回り、経済成長に貢献するとともに、工業製品は我が国の輸出の94%(注1)をも占めており、製造業は引き続き日本経済の牽引力であることが期待されている。 図表I-1-2-20 製造業と全産業の労働生産性の伸び (工場の国内回帰)  1990年代以降、我が国では製造業を中心に、安価な労働力や現地市場の成長性を求めて、生産拠点を東南アジアや中国等の海外に移す動きが活発になった。こうした動きの影響もあって、我が国の新規工場立地件数は、平成元年以降減少の一途をたどっていた。しかしながら、内需の拡大に加えて、技術・ノウハウの海外への流出防止、高機能・高品質の製品を生み出す生産技術の蓄積等といった国内立地の利点が改めて見直されるようになり、近年になって、工場の国内回帰現象が指摘されるようになった。  経済産業省の工場立地動向調査によると、平成14年の新規工場立地件数は過去最低の844件まで落ち込んだが、15年以降は対前年度比19〜25%の増加を続け、ピーク時の4,147件(平成元年)には及ばないものの、17年の新規工場立地件数は1,544件まで回復した。また、17年に国際協力銀行が実施した「2005年度海外直接投資アンケート調査(注2)」においては、国内事業の中期的(今後3年程度)見通しについて、「強化・拡大する」と回答した企業が47.0%、「現状程度を維持する」と回答した企業が46.3%を占めており、国内事業の強化・拡大姿勢は引き続き強まっている。 図表I-1-2-21 工場立地件数の推移  一方で、製造業の海外生産比率(国内全法人ベース)は、平成16年度には16.2%(注3)と過去最高を記録しており、引き続き海外生産についても強化・拡大される傾向にある。しかしながら、同アンケート調査によると、国内事業に対する取組み姿勢について、半数近くが「国内事業展開への影響はなかった」とし、「海外生産が国内生産を代替したため縮小した」とした割合は14.8%にとどまっており、最近の傾向として、海外生産の強化・拡大が必ずしも国内生産の縮小をもたらしてはいないことが見てとれる。 図表I-1-2-22 海外直接投資アンケート調査 (新規工場立地件数の地域別状況)  最近の新規工場立地件数について地域別の状況を見ると、平成15年以降全体として増加を続ける中で、14年と17年の件数を比較すると全ての地域ブロックにおいて増加している。その中でも、北関東・甲信、東海、近畿においては2倍以上の増加となっている。 図表I-1-2-23 地域ブロック別新規工場立地件数の推移  また、三大都市圏と地方圏との新規工場立地件数の構成比を比較すると、平成10年までは三大都市圏が約2割、地方圏が約8割というシェアのまま横ばいで推移してきたが、最近の立地件数の伸び率が三大都市圏のほうが高かったこと等から、17年の構成比では、三大都市圏が約3割、地方圏が約7割となるなど、三大都市圏への立地の割合がやや高くなっている。 図表I-1-2-24 三大都市圏と地方圏の新規工場立地件数のシェアの推移 (注1)経済産業省「2006年版ものづくり白書」による。値は2004年のもの (注2)海外現地法人を3社以上有している製造業945社を対象としたアンケート調査。有効回答数は590 (注3)経済産業省「海外事業活動基本調査」