第5節 地域における建設産業の新たな役割 (地域の建設業の状況)  建設業は、全産業就業者数の約1割を占める重要な産業である。とりわけ、地域経済に占める公共投資のウェイトが高い地方圏においては、立ち遅れている社会資本整備の担い手であるとともに、多くの就業機会を提供するなど、地域の基幹産業として、地域の経済、社会の発展に欠かすことのできない役割を担っている。(注1) 図表I-2-5-1 全産業就業者に占める建設業就業者の割合 図表I-2-5-2 県内総生産に占める公的固定資本形成の割合  しかしながら、近年、建設投資額は減少傾向にあり、とりわけ公共投資が、厳しい財政状況を反映し、国・地方を通じて大幅に減少しているなどの影響から、地域の建設業は厳しい経営環境に直面している。特に九州、四国、北陸、東北等では、建設業の全倒産件数に占める割合が高くなっており、地方圏においては、より一層深刻な状況にあると考えられる。  また、建設業就業者数は平成9年をピークとして、100万人以上減少しており、ピーク時と比較して、北関東・甲信(約26%減)、四国(約24%減)、東北(約24%減)の減少率が高くなっている。 図表I-2-5-3 地域別建設業倒産構成比の推移 図表I-2-5-4 地域別建設業就業者数の推移 (地域において建設業の果たす多様な役割)  地域の建設業は、以上のように厳しい経営環境の下にあるが、一方で、専門的な技術者、技能者、建設機材等に加えて、本業を通じて長年培った技術やノウハウを持ち、地域の実情を熟知していることから、地域において多様な役割を果たすことが期待される。  これまでも、災害時には、国や地方公共団体と建設業団体等との間で締結された防災協定(注2)に基づき、応急対策・復旧対策において中核的な存在として活動し、地域に貢献している。  さらに、地域の中小・中堅建設企業においては、経営基盤の強化に向けて、建設業内における他分野や、新分野への進出等の新たな地域のニーズに対応した取組みが活発化している。具体的には、1)官の事業のアウトソーシング拡大の流れを受けた、公共施設の維持管理等の実施、2)耕作放棄地や管理が行われていない森林の増大等を背景にした、新たな担い手としての農林業への進出、3)高齢化の進む過疎地域における公共交通や福祉等のサービスの提供等であり、このような先導的な動きを支援していく必要がある。 (注1)本節において、地域ブロックの分け方は、以下のとおりとする。図表中の関東・甲信は北関東・甲信と南関東を合わせたものとする。 東北:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、北関東・甲信:茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県、南関東:埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、北陸:新潟県、富山県、石川県、福井県、東海:静岡県、岐阜県、愛知県、三重県、近畿:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、中国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、四国:徳島県、香川県、高知県、愛媛県、九州:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 (注2)災害時に防災活動を行うことを約束したもの