(4)不動産市場の活性化 1)不動産市場の現状  国民経済計算によれば、我が国における不動産市場(土地市場も含む。以下同じ)の市場規模は、平成17年末現在で、法人所有、個人所有、国・地方等の公的セクター所有の総計で約2,300兆円となっているが、その中でも、不動産証券化の市場規模が引き続き拡大している。Jリート(不動産投資法人)、不動産特定共同事業、特定目的会社等の実績を合わせた不動産証券化の市場規模は、累計で16年度末には約18兆円、17年度末には約25兆円と順調に拡大している。  Jリートは、ミドルリスク・ミドルリターンの新しい商品として、低金利下の運用難の状況において、投資の多様化にも寄与しており、平成18年12月末現在、40銘柄のJリートが上場し、約588万口、約4兆9,500億円の不動産投資証券が流通している。Jリートにより取得された総資産の額は約5兆6,000億円となっている。また、近年は、ファンド・オブ・ファンズ(注1)を通じた個人投資家による投資も拡大しており、Jリートに投資するファンド・オブ・ファンズは、総額9,500億円程度の規模になっている。 2)不動産市場の条件整備  不動産証券化は、投資単位の小口化を可能にし、約1,500兆円と言われる個人金融資産を不動産市場に呼び込むことにより、その活性化を促進するものであり、土地の流動化、経済の活性化にも大きく貢献するものである。しかしながら、不動産市場の透明性が確保されていなければ、市場に対して長期・安定的な資金が流入せず、不動産市場の持続的な発展も望めない。  このため、国土交通省では、不動産市場の透明化、取引の円滑化・活性化等を図るため、取引価格等の調査、公表を行っている。この調査は、平成17年度から三大都市圏の政令指定市を中心に開始し、18年度は、調査対象地域を全国の政令指定市を中心に拡大している。調査によって得られた情報は、個別の物件が特定できないよう配慮した上で、取引された不動産の所在、面積、価格等をインターネット(土地総合情報システム(注2))を通じて公表している。(19年2月現在の情報提供件数は63,636件、アクセス件数は1,949万件以上) 図表II-5-4-13 土地総合情報システム  また、消費者の不動産取引価格の相場観の把握等を支援し、消費者が安心して不動産取引を行える環境整備を推進するため、指定流通機構(レインズ)(注3)が保有する不動産取引価格情報の加工情報をインターネットを通じて提供するためのシステム開発を進めている(平成19年4月に本格稼働予定)。さらに、物件情報その他消費者にとって有益な情報を提供する不動産統合サイト(不動産ジャパン(注4))を不動産業界が一体となって整備しており、国土交通省としてもこの取組みを支援している。 3)税制の活用  平成19年度税制改正においては、長期(10年超)保有の土地、建物を譲渡し、国内にある土地、建物、機械装置等に買い換えた場合の特例措置(譲渡所得の課税繰延、買換資産の圧縮記帳(80%))を延長することとしている。また、特定の民間住宅地造成事業のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除について、適用期限を延長することとしている。さらに、不動産の証券化を推進する観点から、Jリート等に係る不動産取得税の特例措置を延長することとしている。加えて、年金基金による匿名組合出資に係る源泉徴収の免除措置を講じることとしている。 4)新しい時代に対応した不動産市場の構築  土地政策については、国土審議会土地政策分科会企画部会不動産投資市場検討小委員会において検討を行い、平成18年7月に最終報告が提出された。この中では、不動産投資市場の今後の成長戦略を掲げるとともに、それを実現するために基本となる市場の透明性の確保策等について提言がなされている。この提言の具体化に向けては、不動産鑑定評価部会等で検討を行っている。  また、不動産業行政の立場からは、社会資本整備審議会産業分科会不動産部会で検討を行っており、平成18年8月の第一次答申では、目指すべき不動産投資市場の姿と、その実現のために講ずべき施策として、投資対象不動産の情報提供内容の共通化等を始めとする施策について提言がなされた。さらに、同年12月の第二次中間整理では、不動産投資市場の健全な発展と年金基金等の長期安定的な資金とを結び付ける不動産投資の一任サービスの環境整備について提言がなされた。同部会では、引き続き、残された課題の検討を行っている。 (注1)投資信託の商品の一つで、運用機関が複数のファンドを組み合わせて一つの投資信託にまとめたもの (注2)http://www.land.mlit.go.jp/webland/ (注3)宅地建物取引業者が指定流通機構に物件情報を登録し、業者間で情報交換を行う仕組み。取引の相手方を広く探索でき、迅速、透明な不動産取引が可能となる。 (注4)http://www.fudousan.or.jp/