8 建設産業の活力回復 (1)建設産業の現状と経営革新等の促進  建設業は、住宅・社会資本整備の直接の担い手であり、国内総生産・全就業者数の約1割を占める重要産業の一つである。しかし、平成18年度の建設投資見通しは約52.9兆円で、ピークであった4年度(約84.0兆円)と比べると約6割と急速に減少してきている。このため、全産業では収益力の回復が着実に進んでいるにもかかわらず、17年度の建設業の売上高営業利益率及び同経常利益率は、それぞれ1.5%、1.7%と、4年度(3.8%、3.2%)の約半分の水準に落ち込んでおり、17年度の全産業の平均(3.2%、3.4%)を大きく下回るなど収益力は依然として低迷している。 図表II-5-4-14 建設投資(名目値)、許可業者数及び就業者数の推移 図表II-5-4-15 建設業の利益率の推移  このように、建設業は、建設投資の急速な減少により過剰供給構造となっており、特に、公共工事への依存度の高い地域の中小・中堅建設業は、公共投資の減少が続く中、厳しい経営環境が続いている。しかし、地域の中小・中堅建設業は、立ち遅れている地域の社会資本整備の担い手であるだけでなく、多くの就業機会を提供するなど、地域の基幹産業として経済・社会の発展に欠かすことのできない役割を担っている。また、風水害や地震等の災害時には、その被害を最小限にとどめ早期復旧を図る上で、地域の実情を熟知している地元建設業者の迅速な対応が不可欠である。加えて最近では、これまで社会資本整備を通じて培った技術・ノウハウを有するとともに、地域に根付いたコミュニティ産業として、公共施設の維持管理等の地域行政におけるニーズ、担い手不足が深刻化している農林業、過疎地域における公共交通・福祉等のサービス等の新たな担い手として、建設業の地域社会における役割が期待されている。  地域社会の活性化や安全・安心の確保等地域づくりを支える建設業の活力の回復を図ることは、地域再生の観点からも重要であり、入札・契約制度の改革により公正な市場環境を確保していくとともに、中小・中堅建設業の経営基盤の強化に向けた経営革新の取組みを促進することにより、技術と経営に優れた企業が伸びる環境整備を進めていくことが必要である。平成18年度においては、「建設業の新分野進出促進支援」を引き続き政策群(注)として位置付け、地域における中小・中堅建設業の新分野進出等の経営革新の先導的な取組みをモデルとして取り上げ、普及促進を図るとともに、新分野進出のための情報提供、経営診断、計画策定支援等関連するサービスを1ヶ所でまとめて受けることができる「ワンストップサービスセンター」を各都道府県に設置し、関係省庁と連携して支援している。また、経営事項審査制度において、建設業の地域における社会的貢献を適切に評価するため、災害時の防災活動に取り組む建設業者に対し加点評価するなどの改正を行い、18年5月から施行している。 (注)民間の潜在力を最大限に引き出すため、府省の枠を超えた連携の下、規制改革、民間の資金・ノウハウの活用、新事業創造等の政策と予算を組み合わせる手法