第7節 地球環境の観測・監視・予測 

第7節 地球環境の観測・監視・予測

1 地球環境の観測・監視

(1)気候変動の観測・監視
 地球温暖化など地球環境問題への国際的な取組みが強化される中、気象庁では、地球環境業務をより充実させるため、今後約5年間を対象とする業務の方向性を検討しつつ、交通政策審議会気象分科会において社会的なニーズや技術的な観点から幅広く議論がなされ、その結果を平成20年6月20日に「今後の地球環境業務の重点施策」として策定・公表した。気象庁では従前からの取組みに加え、この「今後の地球環境業務の重点施策」に則り、以下の施策を進めている。
 温室効果ガスの状況を把握するため、大気中のCO2等を国内3箇所の観測所で、北西太平洋の洋上大気や表面海水中のCO2を海洋気象観測船で観測しているほか、気候変動に影響を及ぼすとされる大気中のエーロゾル(浮遊微粒子)についても観測しており、これらの観測成果や解析結果を公表している。
 また、地球温暖化に伴う海面水位の上昇を把握する観測を行い、日本沿岸における長期的な海面水位変化傾向等の情報を発表している。
 このほか、気候変動の監視及び季節予報の精度向上のため、(財)電力中央研究所と共同で、過去の全世界の大気状態を一貫した手法で解析する「長期再解析プロジェクト」を実施し、国内外の研究機関等に公開している。
 なお、観測結果等を基に、「気候変動監視レポート」や「異常気象レポート」をとりまとめ、毎年の気候変動、異常気象、地球温暖化等の現状や変化の見通しについての見解を公表している。
 
図表II-7-7-1 地球環境の観測・監視体制の強化

図表II-7-7-1 地球環境の観測・監視体制の強化

(2)次期静止気象衛星整備に向けた取組み
 次期静止気象衛星ひまわりを、台風や集中豪雨等に対する防災機能の向上に加え、温暖化に深く関わる地球の熱のやり取りの定量的な把握、火山灰や大気中の微粒子の分布や移動の高精度の把握などの地球環境観測機能を世界に先駆けて強化した「静止地球環境観測衛星」として整備すべく、計画を進めている。

(3)海洋の観測・監視
 海洋は、温室効果ガスであるCO2を吸収し、熱を貯えることによって、地球温暖化を緩やかにしている。また、海洋変動は、台風や異常気象等にも深く関わっており、地球環境問題への対応には、海洋の状況を的確に把握することが重要である。
 地球全体の海洋変動を即時的に監視・把握するために、国土交通省は関係省庁等と連携して、世界気象機関(WMO)等による国際協力の下、海洋の内部を自動的に観測する装置(アルゴフロート)を全世界の海洋に展開するアルゴ計画を推進している。
 
図表II-7-7-2 アルゴ計画の観測概要

図表II-7-7-2 アルゴ計画の観測概要

 気象庁では、観測船、アルゴフロート、衛星等による様々な観測データを収集・分析し、地球環境に関連した海洋変動の現状と今後の見通し等を総合的に診断する「海洋の健康診断表」を公表している。
 
図表II-7-7-3 気象庁ホームページで公開している「海洋の健康診断表」の例

図表II-7-7-3 気象庁ホームページで公開している「海洋の健康診断表」の例
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 海上保安庁は、アルゴフロートのデータを補完するため、伊豆諸島周辺海域の黒潮変動を海洋短波レーダーにより常時監視・把握するとともに、観測データを公表している。また、我が国の海洋調査機関により得られた海洋データを収集・管理し、関係機関及び一般国民へ提供している。

(4)オゾン層の観測・監視
 太陽からの有害な紫外線を吸収するオゾン層を保護するため、フロン等オゾン層破壊物質の生産、消費及び貿易が「モントリオール議定書」等によって国際的に規制されている。
 気象庁では、オゾン、紫外線を観測した成果を毎年公表しており、紫外線による人体への悪影響を防止するため、紫外線の強さを分かりやすく数値化した指標(UVインデックス)を用いた紫外線情報については、毎日公表している。

(5)南極における定常観測の推進
 国土地理院は、基準点測量、重力測量、GPS連続観測、写真測量による地形図作成等の観測を実施している。観測データは、南極地域における地球環境変動等の研究や測地・地理情報に関する国際的活動に寄与している。
 気象庁は、昭和基地でオゾン、日射・放射量、地上、高層等の気象観測を継続して実施している。観測データは気候変動の研究や南極のオゾンホールの監視に寄与するなど国際的な施策策定のために有効活用されている。
 海上保安庁は、海流、水温等の観測、栄養塩、溶存酸素、重金属等に関する海水の化学分析、海底地形測量を実施している。これらのデータは、南極周極流の変動特性を明らかにし、南極海の海洋構造を把握するために必要であり、地球規模の気候システムの解明に寄与している。また、潮汐観測も実施し、地球温暖化と密接に関連している海面水位変動の監視に寄与している。

 

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