第3節 我が国の経験・技術・ノウハウを活かした国際協力 

第3節 我が国の経験・技術・ノウハウを活かした国際協力

(1)国際協力の展開
 開発途上国の発展には、経済社会基盤の整備を始め、計画・政策策定や管理・運営を担う人材の育成が不可欠であり、国土交通分野の国際協力に対するニーズが高いことから、1)政策対話を通じた国際交流の実施やNGO等民間団体による国際協力の支援と研修生受入れ等を通じた人材育成、2)相手国の実情に応じた効果的な協力を行うための援助方針の策定、プロジェクト形成及び国際協力評価事業、3)地球環境問題への対応や安全性向上のための技術開発等の実施、4)専門家等の派遣、要人招へい等による日本の技術・基準の移転、5)JICA等関係機関を通じた技術・ノウハウの移転や国際機関と連携した国際協力などを推進している。

(2)広域的な経済社会基盤の整備等への協力
 国際的な相互依存関係の拡大を踏まえ、影響が複数国にわたるアジアハイウェイ、メコン地域開発、アフリカ広域インフラ等、広域的な経済社会基盤整備を支援している。
 アジアハイウェイについては、2004年(平成16年)「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定」(同協定では、「東京−福岡」が路線「AH1」として位置づけ)に我が国を含む27ヶ国が署名、2005年(17年)に発効し、我が国は整備促進に向けた技術協力等を推進している。メコン地域開発については、2004年(16年)に取りまとめた「メコン地域のインフラ分野における今後の支援のあり方(提言)」に基づき、技術協力等を推進している。アフリカ広域インフラについては、TICAD IVでの福田総理(当時)の表明を受けた「アフリカへの貿易投資促進合同ミッション」への参加など、技術・ノウハウを活用したアフリカへの広域インフラ整備の支援を推進している。
 また、我が国の優れた鉄道技術を海外に普及させる観点から、中国高速鉄道に関する技術交流や、ブラジルやカリフォルニア等の高速鉄道計画について省エネルギー性に優れ、安全、安定、高頻度、大量輸送を強みとする我が国の高度な新幹線技術の導入に向けた取組みを進めるとともに、渋滞の緩和や環境改善に資する都市鉄道についても技術的な協力を実施している。さらに、産業界から要望の強いASEANやインドにおける物流インフラ整備、ロシアにおける貨物輸送の円滑化等に関して関係国政府などと共同で検討を行っている。
 我が国建設業については、開発途上国での質の高い社会資本整備により、雇用創出、現地での資材調達、技術・ノウハウの移転等により、経済社会の発展に貢献している。このため、EPA等の機会を活用して、我が国建設業の海外展開を支援し、開発途上国への貢献を図る。

(3)環境・安全面での協力
 環境面において、京都議定書に基づくクリーン開発メカニズム(CDM)の社会資本整備分野での活用を促進するため、技術検討会や国内外でのセミナーを通じた環境整備を実施している。また、アジアの自動車行政官に対する研修やミャンマーにおいて都市バスの交通改善に資する調査を実施している。
 安全面では、インドネシアに対し航空機事故調査レベルの向上に資する研修等の技術協力を行っている。また、開発途上国の保安担当官を対象に、港湾、航空各分野のセキュリティに関する専門家会合や集団研修を行っている。海上保安庁でもこのようなキャパシティビルディングを積極的に推進しており、アジア地域の海上保安機関の能力向上を目的とした研修、訓練の実施等をしている。
 災害対策等への協力については、国際緊急援助隊として派遣される救助チームに海上保安庁、専門家チームに国土交通省及び海上保安庁が参加している。また、被災地等への政府調査団等にも参加している。具体的には、中国四川大地震、バングラデシュ及びミャンマーのサイクロン被害、ツバルの気候変動問題に関する調査団への参加等、各分野の専門家を派遣している。
 さらに、都市、河川、道路、住宅、地図、鉄道、海事、気象等の各分野においても各国で技術移転を目的とした専門家派遣、研修等の技術協力を実施している。

(4)海外における官民協働型インフラ整備プロジェクトの促進への取組み
 開発途上国における膨大なインフラ需要が見込まれる中、民間のノウハウや資金力を活用したインフラの整備手法が重要性を増している。一方、我が国建設産業は、国内市場が縮小する中で、国内依存度の高い産業構造を転換することが重要な課題となっている。このため、モンゴル(水資源)及びベトナム(道路)官民研究会を設置し、産官学の協働により、官民協働型(PPP)インフラ整備プロジェクトの促進に向けた検討を行っている。

(5)我が国建設業の国際競争力強化
 国内建設市場の競争環境が激化する中、我が国建設業は、高い技術力・ノウハウを活かした海外進出をしてきており、海外受注額は、2007年度(平成19年度)2年連続の過去最高額となる1兆6,813億円となっている。
 積極的海外展開を推進するため、我が国の建設産業のプレゼンスを高めることに貢献した海外事業を評価すべく、「JAPANプロジェクト国際賞」(大臣表彰)を創設し、インフラ整備に関連する優れた建設環境技術を諸外国に紹介すること等を目的とした「国際建設・環境シンポジウム」を実施したところである。

 

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