第2章 私たちの暮らしにおける今後の国土交通施策  第1章で見た様々なニーズに対して、国土交通行政は、ハードとソフトを連携させた多彩なツールでもって、これに対応していかなければならない。第2章では、今後の取組みについて、その方向性と主要な施策を紹介する(なお、国土交通省の施策はこの他にも多岐にわたり、その全体像は第II部で説明する)。 (まずは暮らしの根幹を確保する)  まずは、日々の生活の営みを成り立たせる根幹を確保する必要がある。  人の生活は、自然災害、犯罪、道路や公共交通における事故などによって脅かされており、暮らしの一番の基礎として、安全・安心を確保することが求められる。  一方で、生活の営みを支える基本的な機能が確保されていることも、最低限必要なことである。住む場所自体はもちろん、最低限の質の確保は不可欠である。また、特に地方では、生活の営みを成り立たせる日常の移動手段を維持しなければならない。さらに、高齢者などいろいろな立場の視点が必要である。  少子高齢化など社会の構造的変化とともに昨今の経済情勢など暮らしを取り巻く環境は厳しいが、その中で、生活の基礎を確保し暮らしに不安をなくすために行うことを、第1節「暮らしにおける安全・安心の確保」と第2節「暮らしにおけるセーフティネット機能の充実」でみる。 (さらに暮らしの質を高める)  これらを確保した上で、さらに日々の生活をよりよいものに変えていく必要がある。  生活の中の様々な活動では、利便性とゆとり・愉しみが求められている。暮らしの舞台であるまちについては、賑わいと活力を取り戻し、さらに魅力を創出することが求められる。また、移動についても、混雑等を解消するとともに、もっと便利で快適に、という要望に応えていく必要がある。  さらに、生活観が多様化し、ワーク・ライフ・バランスが注目されている。住み方、働き方などについて、様々なライフスタイルが選択できるような環境をつくることも重要である。  このように、生活の質を高め、暮らしを一段豊かにするために行うことを、第3節「日々の生活の心地良さ向上」と第4節「多様なライフスタイルを支える基盤の形成」でみる。 (まわりのつながりも考える)  また、日々の生活は、広域的なつながりの中で、目に見えないもの、無形のものにも支えられている。  人やモノの行き来を支えるネットワークの機能強化が求められている。また、観光が、新たな機会を地域にもたらすことが期待されている。  生活を支えるつながりを創出・維持強化するために行うことを、第5節「広域的・グローバルな展開への対応をサポート」でみる。  これら5つの視点からの施策は多層的に相関し、個々の施策が相まって暮らしを支える。現在、生活の基盤をしっかりと形成し、暮らしの不安や不満を解消し、さらにその質を高めていくことが求められているが、これらの施策をとおしてその課題に応えていきたい。