3 航空ネットワークの整備 (1)国内航空 1)現状と課題  国内航空政策においては、空港整備等のハード面の施策と規制緩和による競争促進等のソフト施策を組み合わせ、ネットワークの拡充を図っている。近年は、路線数は減少傾向、1路線当たりの年間平均運航回数は増加傾向にある。  これらのことは、航空会社が、路線数の量的な拡大から転換し、需要動向等を勘案し、路線の集中を図ってきているものと考えられる。このような中で、路線が集中する東京国際空港(羽田)は既に能力の限界に達しており、今後とも増大が見込まれる航空需要に的確に対応し、利用者利便に応えるためには、その容量拡大が喫緊の課題となっている。 図表II-5-1-6 航空旅客の推移 2)国内航空ネットワークの充実のためのソフト施策  地方航空ネットワークの形成・充実を図るため、着陸料の軽減措置や発着枠の配分の工夫を行っている。東京国際空港(羽田)の発着枠の配分については、航空会社評価枠(注1)の評価項目に地方路線を含む全国的な航空ネットワークの形成・充実への貢献度を取り入れている。また、少便数路線(1日3往復以下の路線)を減便する場合にはほかの少便数路線にのみ転用を認めるほか、平成17年度以降に配分した新規優遇枠(注2)により運航している路線を減便する場合は、東京国際空港(羽田)の着陸料が軽減されている路線に転用する場合を除き、当該減便に係る発着枠を回収する制度を導入し、地方路線の維持を図っている。 図表II-5-1-7 航空ネットワークの推移 (2)国際航空 1)現状と課題  航空業界は、2008年(平成20年)に入ってからの急激な燃油価格の高騰や世界的な金融危機の影響を受けて、各国の航空企業において、路線・便数の縮小や人員・機材の削減等の動きが出てきており、先行き不透明な状況となっている。  我が国における国際航空輸送も、世界的な原油高、金融危機等に起因した航空路線網の縮小等の影響により、20年には減少傾向を示している。しかしながら、国際旅客の大半が航空輸送によって担われ、国際貨物に占める航空輸送の重要性も増してきていることから、国際航空ネットワークの拡充は不可欠であり、従来、国際空港の整備や新規航空協定の締結等を通じて、着実にその推進を図ってきたところである。  国土交通省においては、19年5月に策定されたアジア・ゲートウェイ構想に基づく航空自由化、東京国際空港(羽田)における国際旅客チャーター便を推進するとともに、20年6月に閣議決定された「首都圏空港(成田・羽田)における国際航空機能の拡充」に向け、着実に航空交渉を行っている。 2)航空自由化  アジア・ゲートウェイ構想に基づき、平成19年8月に、韓国との間で、空港容量に制約のある我が国の首都圏空港関連路線を除き、日韓相互に、乗り入れ地点及び便数の制限を廃止し、航空自由化を実現することで合意した。その後、同年11月にタイ、20年1月にマカオ、香港、5月にベトナム、7月にマレーシア、9月にシンガポールとの間で、日韓間と同様の航空自由化を実現することで合意した。  今後とも、自由化に向けてアジア各国と着実に交渉を進めることとしている。欧米との間でも、様々な課題はあるが、欧米の動向を見極めつつ、自由化に向けて交渉を行うこととしている。 3)東京国際空港(羽田)における国際旅客チャーター便の運航  東京国際空港(羽田)の昼間時間帯における国際旅客チャーター便は、ソウル金浦空港との間で1日8便(平成15年に開始)、上海虹橋空港との間で1日4便(19年に開始)、それぞれ運航されている。  また、19年6月からは、特定時間帯(20時半〜23時の出発、6時〜8時半の到着)における国際旅客チャーター便の運航が可能となり、特定時間帯を活用して、ウランバートル、サイパン、ソウル、パラオ等へ運航されているほか20年4月から全日空が、同年7月から日本航空が、香港へ旅客チャーター便を毎日運航しており、20年末までに合計987便が運航されている。 (3)首都圏空港(成田・羽田)における国際航空機能の拡充  「経済財政改革の基本方針2008」(平成20年6月29日)に盛り込まれた「首都圏空港の国際航空機能拡充プラン」に基づき、成田と羽田の一体的活用により、国際航空機能の最大化を実現するため、22年に羽田は昼間約3万回、深夜早朝約3万回の合計約6万回、成田は約2万回の合計約8万回の国際定期便を実現し、首都圏空港の国際線発着回数を現在の約18万回から約26万回に44%増加させることとしている。  このうち、羽田の昼間は、羽田にふさわしい近距離アジア・ビジネス路線として、ソウル、上海等の都市、さらに、北京、台北、香港まで就航していくこととしている。また、羽田の深夜早朝は、欧米をはじめとした世界の主要都市への就航を実現することとしている。これにより、成田からの全世界ネットワークに加え、羽田からも昼間は香港まで、深夜早朝は欧米や東南アジア等の主要都市へ行けるようになり、首都圏からの需要の多い世界の主要都市へ成田と羽田からのダブル・ネットワークが形成されるとともに、成田・羽田の一体的運用により、首都圏空港の24時間化が実現されることとなる。  今後は、上記の考え方に基づき、首都圏空港を一体的に活用して国際航空機能の最大化が実現できるよう、精力的に航空交渉に取り組むこととしている。 (4)空港運営の充実・効率化  空港政策の重点を整備から運営へシフトさせ、既存ストックの活用、高質化、利便の向上を中心に取り組むこととし、このため、平成20年6月に「空港整備法」を「空港法」に改め、空港ターミナルの適確な運営を確保するための制度、空港と周辺地域・関係者の連携を強化する協議会制度の創設等により、空港運営の更なる充実・効率化を図ることとした。 (5)空港整備の現状 1)東京国際空港(羽田)の整備 (ア)現状  東京国際空港(羽田)は、全国49空港との間に、1日約420往復(平成20年12月ダイヤ)のネットワークが形成され、国内線で年間約6,100万人(19年度定期便実績)の人々が利用している。  このような中で、昭和58年度から平成18年度までに沖合展開事業を実施し、同空港の発着枠は拡大されてきたが、既にその能力の限界に達している中、今後さらに国内・国際航空需要の増大が見込まれ、首都圏空港として成田国際空港との一体的な活用が求められている。 図表II-5-1-8 東京国際空港(羽田)の発着回数 (イ)再拡張事業  再拡張事業は、新たに4本目の滑走路等を整備し、年間の発着能力を増強することで、発着容量制約の解消、多様な路線網の形成、多頻度化による利用者利便の向上を図るとともに、国内・国際双方の需要の伸びを勘案し、国際定期便の就航を図るものであり、平成16年度から事業が進められている。  このうち、滑走路整備事業については、19年3月に本格工事に着手し、また、国際線地区整備事業(旅客ターミナル事業・貨物ターミナル事業・エプロン等事業)についても、PFI手法を活用し、それぞれ22年10月末の供用に向け、着実に整備を推進している。 図表II-5-1-9 東京国際空港(羽田)の再拡張概要 2)成田国際空港の整備  成田国際空港は、昭和53年の開港以来、日本の表玄関として重要な役割を果たしてきたが、現時点でその処理能力がほぼ限界に達しており、強い増便要請や新規乗り入れ要請に対応できない状況にある。このため、平成18年9月、地元自治体等の理解を得た上で、使用機材の制限等がある暫定平行滑走路(2,180m)の北伸による2,500m化事業に着手し、22年3月の供用開始を目指して整備を進めている。 図表II-5-1-10 成田国際空港の施設計画  一方、成田国際空港(株)については、完全民営化の推進が閣議決定され(19年6月)、そのために必要な措置について、20年8月より、内閣官房長官及び国土交通大臣の下に「空港インフラへの規制のあり方に関する研究会」を開催し、我が国の開かれた投資環境の整備、安全保障等の幅広い観点から検討を行ってきた。 図表II-5-1-11 成田国際空港における発着回数・旅客数  この結果、1)首都圏における国際航空機能の拡充等の国の重要な航空政策を適切に遂行するため、当面、国が一部株式を保有し完全民営化は段階的に実施すべきこと、2)特定の者の利害が空港の運営方針に過度に影響を与え、公正かつ平等な運営や他空港との公正な競争を妨げることのないよう、内外無差別の大口株式保有規制を導入すべきこと等の方向性が示され、今後、本内容を踏まえて所要の法改正を行うこととしている。 3)関西国際空港・中部国際空港の現状  関西国際空港は、平成19年の2本目の滑走路の供用により、我が国初の完全24時間運用可能な国際拠点空港となった。  20年度においては、2本の滑走路をフル活用し、更なる国際競争力の強化を図る観点から、物流施設の二期島への展開を実施するとともに、連絡橋道路通行料金の引き下げによるアクセス改善に取り組んでいる。  中部国際空港では、旅客エプロンの拡充、着陸援助施設の性能向上などを通じ利用者利便の向上を図り、更なる需要拡大に取り組んでいる。 4)一般空港等の整備  一般空港等については、ハード・ソフト施策の組合せや既存空港の有効活用を中心とした質的充実に重点を移し、滑走路新設・延長に係る新規事業については、真に必要なものに限って事業化することとしている。平成20年度は6空港の滑走路延長事業等を継続するとともに、既存空港の機能保持のため更新・改良等を実施している。また、福岡空港及び那覇空港については将来需要の逼迫が懸念されるため、福岡空港では抜本的な空港能力の向上方策等に関する総合的な調査を、那覇空港では総合的な調査の結果を受け、滑走路増設案を絞り込む構想段階調査を実施している。 5)空港等機能高質化事業  今後の空港整備については、乗継の円滑化や旅客ターミナル施設の充実等、利用者の視点に立った取組みを推進する必要がある。このため、空港等機能高質化事業として、就航率の向上や航空物流機能の強化、空港のバリアフリー化等を推進している。 (注1)航空会社の事業活動について一定の評価項目による評価を基に配分する発着枠 (注2)新規航空会社の参入促進又は事業拡大に優先的に配分する発着枠