2 自動車運送事業の動向と施策 (1)旅客自動車運送事業 1)乗合バス事業  乗合バスの輸送人員及び収入は、中心市街地の空洞化等の都市構造の変化やモータリゼーションの進展等に伴う自家用自動車の普及等により長期的な減少傾向にあり、加えて軽油価格の高騰による燃料費の増大等により乗合バスを取り巻く環境は極めて厳しい状況が続いている。また、大都市部における輸送人員及び収入は下げ止まる一方で地方部の輸送人員及び収入の減少は著しく、収支率等の格差が拡大している。 図表II-5-4-1 乗合バスの輸送人員、営業収入の推移 2)貸切バス事業  貸切バス事業については、平成12年2月の規制緩和後、低廉で多様なバスツアーが催行されるなど、利用者へのサービスの向上が図られる一方で、事業者数の増加に伴い競争は激化している。また、団体旅行の小口化、旅行商品の低価格化等により運送収入は減少しており、加えて、燃料費の高騰等の要因もあり、貸切バス事業を取り巻く環境は、厳しい状況が続いている。 図表II-5-4-2 貸切バスの事業者数、輸送人員、車両数、営業収入の推移 3)タクシー事業  ハイヤー・タクシーの輸送量は長期的に低下傾向にある。タクシーについては、観光タクシーや、運賃の多様化等事業者の創意工夫による輸送サービスの改善等の取組みがなされているが、厳しい経営環境が続き、輸送の安全やサービスの質の低下が懸念されている。 図表II-5-4-3 ハイヤー・タクシーの日車営業収入等の推移  このような中、平成18年6月以降、全国各地でタクシー運転者の労働条件の改善を主な理由とする運賃改定申請がなされ、これまで、全国92の運賃ブロックのうち、53地区で運賃の改定が実施された(20年12月末現在)。運賃改定後の運転者の労働条件の確実な改善を図るための措置を講ずるとともに、20年2月に、交通政策審議会に「タクシー事業を巡る諸問題に関する検討ワーキンググループ」が設置され、同年12月にタクシー事業を巡る諸問題への対応方策に関する答申を受けたことから、今後その内容を踏まえた法令の制定等を予定しているところである。  一方、19年6月、「タクシー業務適正化特別措置法」が改正されたことにより、20年6月より、タクシー運転者の登録を必要とする指定地域を従来の東京、大阪に加え、主な政令指定都市を中心とする地域に拡大を行った。  また、20年9月、宮城県仙台市を道路運送法に基づく緊急調整地域に指定し、22年8月31日までの間、新規参入や増車を禁止することとなった。これに先立つ20年7月からは、緊急調整地域の指定に至る事態を未然に防止するための運用上の措置である特別監視地域の指定制度に係る試行的措置を見直し、23年7月10日までの試行的な措置として、増車等に際して事業者に運転者の労働条件等に関する報告を求めるなど、供給の拡大に対する事業者の慎重な判断を促す新たな措置を導入した。 (2)自動車運転代行業  自動車運転代行業は、飲酒時の代替交通手段として活用することが期待されているところであるが、料金システムに関する不透明感、安心できる業者の情報の不足等の問題が指摘されていた。このため、国土交通省は、平成20年2月に警察庁と連携し、運転代行サービスの利用環境を改善するための施策を「運転代行サービスの利用環境改善プログラム」としてとりまとめ、これに盛り込まれた施策を実施している。なお、20年12月末現在、認定を受けて営業している自動車運転代行業者の総数は7,763者となっている。 (3)貨物自動車運送事業  貨物自動車運送事業の輸送トンキロは、近年増加傾向にあるが、平成2年の規制緩和後、事業者数が約5割増加するなど競争が激化するとともに、運賃が低下傾向にある。安全の確保や環境規制への対応等が求められる中で、原油価格の高騰により、事業者を取り巻く経営環境は非常に厳しい。  このため、国土交通省では原油価格高騰に対応した運賃設定を図るための環境整備、荷主等の協働による適正取引の推進、燃費改善や事業の構造改善等への取組みに対する支援等を行っている。 図表II-5-4-4 トラック輸送の動向