コラム 都市を襲う集中豪雨や局地的な大雨に備えるために  平成20年度は集中豪雨(注1)や局地的な大雨(注2)が多発した年でした。7月28日に集中豪雨により石川県金沢市において時間雨量114mm(注3)を記録し、床上浸水棟数が500棟を超える大きな被害が発生しました。また、同日に発生した局地的な大雨により兵庫県神戸市の都賀川では、水位が10分間に134cm上昇し、児童3名を含む5名が死亡する水難事故が発生しました。20年8月末豪雨では、愛知県岡崎市において1時間雨量146.5mm(注4)を記録し同地点の観測史上1位の値を更新するなどし、各地で記録的な浸水被害が発生しました。このように、近年、都市を襲う集中豪雨や局地的な大雨の急増が社会問題化しており、その対策が急務となっています。これに対応するためには、河川や下水道の平常時からの適切な維持管理に加え、ハード対策のみならず、ハザードマップ等防災情報の提供等によるソフト対策やそれを活用した住民の自助等を組み合わせた総合的な対策が求められています。  都賀川の水難事故は、水位が上昇し始めてから避難を始めたのでは、避難に必要な時間を十分に確保できない今までにない事象によるものでした。河川利用者は、自らの安全を自らが守ることが基本であり、このような事象に対応するためには、自らが雨の現況や気象予測等の情報を早めに収集することで危険を判断し、迅速な行動をとることが重要です。このため、河川利用者の安全意識を高める啓発等の取組みを進めるとともに、危険の判断に必要な情報提供等を推進します。具体的には、局地的な大雨や集中豪雨による被害軽減のため、既設の観測設備を十分活用するとともに、実況監視を強化するための高解像度の気象レーダー整備に着手しています。また、都市部における浸水被害を軽減するため、浸水の恐れがある地区において、下水道管理者が有する降雨データや雨水管きょの水位データ等の情報提供や、それらを踏まえた止水板の設置等の住民の自助を推進しています。 都賀川(神戸市灘区)の急な増水(平成20年7月28日)  「川の防災情報」(注5)では、レーダー雨量や水位情報等の時々刻々と変化する河川の状況に関する情報をパソコンや携帯電話から取得することができ、20年8月末豪雨の際には約260万アクセスを記録するなど、防災情報として活用されているところです。また、東京都下水道局でも、降雨レーダーを活用したリアルタイム情報提供システム(注6)を構築し、パソコンや携帯電話で閲覧できるようにしています。本サイトでは、降雨エリア・強度をリアルタイムで表示し、時間経過も把握できることから、一般住民でも、簡単に、今後の降雨エリア・強度を予想できます。降雨時には、数万件のアクセスがあると言われ、屋外で作業を実施する工事関係者、オープンテラスを設置した飲食店等、幅広く活用されています。  このような情報提供の事例が全国各地で増えてきており、今後とも、国土交通省では、適切な維持管理に加え、ハード対策のみならず、こうしたソフト対策や自助の取組みを推進することにより、総合的な対策を進めていきます。 (注1)集中豪雨:積乱雲が同じ場所で次々と発生・発達し、激しい雨が数時間継続することで起きる。 (注2)局地的な大雨:単独の積乱雲の発達によって、一時的に雨が強まることで起きる。 (注3)芝原橋雨量観測所(石川県) (注4)岡崎地域気象観測所(気象庁) (注5)川の防災情報(http://www.river.go.jp) (注6)東京アメッシュ(http://tokyo-ame.jwa.or.jp/index.html)