1 公共交通機関における安全管理体制の構築・改善  平成17年上半期に公共交通機関において多発したヒューマンエラーに起因すると見られる事故・トラブルを受け、18年10月に「運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律(運輸安全一括法)」が施行され、陸・海・空の運輸事業者に対し、「安全管理規程」の作成・届出、「安全統括管理者」の選任・届出等の義務付け等が行われた。これにより、経営トップから現場まで一丸となった安全管理体制の構築が図られ、その取組み状況について、「安全管理規程に係るガイドライン」に沿って、誉めるところは誉め、改善が望ましいところは助言する、国と事業者がともに運輸事業の安全性を高めようという、従来の行政手法になかった新たな運輸安全マネジメント制度が導入された。  この制度は、企業等に対する「品質管理及び品質保証に関する国際規格」であるISO9000シリーズを参考にした制度で、いわゆるPDCAサイクルによる取組みの向上を図るもので、従来からの保安監査と車の両輪となって実施することにより、公共交通機関のより一層の安全の確保を図ろうとするものである。本制度による事業者の安全管理体制の構築・改善状況を国が評価する「運輸安全マネジメント評価」については、20年12月末までに、本省と地方運輸局等を併せて延べ1,148社(鉄道279社、自動車263社、海運567社、航空39社)に対して実施した。また、大規模又は社会的影響の大きな事業者については、その取組み状況に合わせた適切できめ細かい3回目の評価を実施している。20年度は、本制度の浸透、定着を図るため、「運輸事業の安全に関するシンポジウム」を開催するとともに、事業者の要望を踏まえ、実践的なノウハウの習得を目的とする少人数制のセミナーを行った。  また、制度導入2周年を迎え、これまで実施した評価結果を総括し、他の事業者の取組みの参考となるよう全体概要(注)を取りまとめた。これによると、各事業者の安全管理体制については、基本的な安全管理のための体制や関連規程類の整備等の枠組みについてはおおむね構築されている一方、その取組み内容については、事業者間・モード間で差があった。各モードの傾向としては、大手の鉄道会社、航空会社及び一部の海運事業者については、安全への取組みを着実に行っているケースが多いが、一方、地方鉄道・索道事業者、小規模の海運事業者や一部の事業者を除く自動車運送事業者は、総じて取組み途上にある。また、19年10月から一部の事業者で進めている2回目の評価では、初回評価で助言した点を踏まえ、輸送の安全のPDCAサイクルを適切に機能させ、安全に関する目標や計画の見直しと改善の仕組み及び内部監査の仕組みの構築等、着実に改善を進めている場合が多いことが確認できた。  なお、評価を受けた事業者に対するアンケート調査の結果では、9割以上の事業者が、運輸安全マネジメント制度は有効であり、制度導入後の安全に係る取組みの変化等があると回答している。  今後は、運輸事業の安全性の一層の向上のため、さらなる制度の浸透・定着に向けた取組み、特に小規模事業者に対する技術的支援や評価員の評価に関する力量の充実・強化等を図ることとしている。 図表II-6-4-1 運輸安全マネジメント評価の実施イメージ (注)http://www.mlit.go.jp/common/000028716.pdf