4 我が国の海洋権益の保全 (1)海洋権益を保全するための警備活動  我が国周辺海域では、東シナ海における中国の資源開発、中国・台湾活動家による尖閣諸島の領有権主張活動、東シナ海等における我が国の同意を得ない海洋調査活動など我が国の海洋権益を脅かす事案が発生している。海上保安庁では我が国の領海における主権を確保するために領海警備を的確に実施していくことに加え、領海の外に広がる広大な排他的経済水域での資源開発活動や海洋調査活動の監視活動を行うことにより、我が国の海洋権益の保全に努めている。 (2)領海及び排他的経済水域における海洋調査の推進  我が国の領海及び排他的経済水域には、調査データの不足している海域が存在している。海上保安庁では、この海域において、海底地形、地殻構造、領海基線等の海洋調査を重点的に実施し船舶交通の安全や我が国の海洋権益の保全、海洋開発等に資する基礎情報の整備を推進することとしている。  他方、日本海においては、平成18年以来、日韓が主張するそれぞれの排他的経済水域(EEZ)が重複している水域(重複水域)内の海底地形に、韓国が韓国語名称を国際登録しようとする動きがある。海上保安庁はこの動きへ対応するため同重複水域内の海底地形調査を計画したが、韓国側が反発、外交交渉等の結果、韓国が国際会議「海底地形名小委員会(SCUFN)」への地名提案を見送っていることから、我が国は調査を中止している。この問題に関連し、18年、我が国が毎年実施してきた日本海等における放射能調査のうち重複水域の調査について、韓国側の反発を受け、外交交渉の結果、同年10月に海上保安庁の測量船と韓国の調査船により共同で調査を行った。19、20年も外交経路による調整の結果、日韓共同で同調査を実施した。 (3)大陸棚の限界画定のための調査の推進  国連海洋法条約は、沿岸国の200海里までの海底等を大陸棚とするとともに、海底の地形・地質が一定条件を満たす場合、200海里を超えて大陸棚を設定することが可能であるとしている。そのためには、「大陸棚の限界に関する委員会」へ大陸棚の地形・地質に関するデータ等を提出し、同委員会の勧告に基づいて大陸棚の限界を設定する必要がある。海上保安庁は、「大陸棚画定に向けた基本方針」に基づいて必要な調査等を推進し、平成20年6月に全ての海域調査を完了した。また、同年10月に総合海洋政策本部において、我が国が延長を申請する大陸棚の限界が決定され、同委員会に申請文書が提出された。  今後、海上保安庁は、同委員会における審査への対応についても、引き続き総合海洋政策本部の総合調整の下、関係省庁と連携・協力し対応していくこととしている。 図表II-6-5-5 国連海洋法条約による大陸棚の定義 (4)沖ノ鳥島の保全  沖ノ鳥島は、我が国最南端の領土であり、国土面積を上回る約40万km2 の排他的経済水域の権利の基礎となる極めて重要な島であることから、国土保全・利活用の重要性にかんがみ、国の直轄管理により十全な措置を講じるとともに、その前提の上に可能な利活用策を検討していく。