コラム 貴重資源であるリンを下水道から再生利用する取組み  近年、中国、インド等の新興国の経済発展や、バイオ燃料ブームによる世界的な穀物増産により、肥料の原料価格が高騰しています。中でも、原産国が限られるリンについては、主要原産国である中国等の輸出抑制の影響もあって、国際取引価格はここ数年間で5倍以上になっており、リンの全量を輸入に頼る日本でも、肥料価格の大幅値上げ等の影響が出始めています。  一方、下水道にはリン鉱石として輸入されるリンの約4〜5割に相当するリンが流入しているとの推計がありますが、コンポスト等として有効利用されている量は約1割にすぎません。このため、下水や下水汚泥からのリンの回収、活用が求められているところです。特に、下水汚泥の焼却灰中に2割程度のリンが含有しているため、高温で燃焼させ衛生的で下水臭もないことから、その活用が注目されています。  岐阜市では、国土交通省が中心となって行った下水汚泥の有効利用をより一層推進するための技術開発プロジェクトであるLOTUS Projectにおいて、民間企業と共同で下水汚泥焼却灰からのリン回収技術の開発を行いました。  開発した技術は、環境負荷のかかるような埋立をしないことを念頭に、下水汚泥焼却灰にアルカリ性溶液を加えてリン酸を溶出させ、リン酸カルシウム塩又は液肥と、無害化した灰に分離して、高付加価値の肥料や肥料原料、建設資材とするものです。  高度処理により河川環境の保全を推進している岐阜市では、灰中のリン含有量が高いことから、平成20年度より本技術のための実施設の建設に着手、焼却灰1,000トン/年からリン酸カルシウム塩を約500トン/年回収し、肥料として流通販売する予定です。 回収したリン酸カルシウム 栽培試験状況