第2節 国際標準への取組み (1)自動車基準・認証制度の国際調和  自動車基準の国際的な調和や認証の相互承認の拡大のため、国連の「車両等の型式認定相互承認協定」(注1)に基づく規則(自動車の装置ごとの基準)の中から38の規則を採用し、相互承認を実施しており、段階的に対象を拡大していくこととしている。また、国連の「車両等の世界的技術規則協定」(注2)の執行委員会副議長や、世界技術規則を策定するための3つの専門家会合の議長を務めるなど、世界技術規則の策定のために積極的に貢献している。 (2)鉄道に関する国際規格への取組み  鉄道の国際規格に、自らの技術を反映させようとする欧州の戦略的攻勢があり、我が国の鉄道業界へ及ぼす影響が懸念されている。国土交通省は、鉄道事業者、関係産業等と協力して、日本の優れた技術を発信するなど国際標準化活動に取り組んでおり、2008年度(平成20年度)は「鉄道分野における標準化活動のアクションプラン」に基づき、積極的な活動を行った。 (3)船舶や船員に関する国際基準への取組み  国際的な海上運送事業は、様々な国籍の船舶・船員で営まれており、安全や環境保護に関する国際的な統一ルールに従い、適正かつ公平な競争条件の下で営まれる必要がある。このため、我が国はSOLAS条約(注3)、MARPOL条約(注4)、STCW条約(注5)等の船舶や船員に関する条約等による国際基準の策定作業に積極的に貢献している。 (4)土木・建築基準及び認証制度の国際調和  近年、市場の国際化が進展している土木・建築・住宅分野における外国建材の性能認定や評価機関の承認等の制度の運用、JICA等による技術協力等の施策を実施し、国際標準化機構(ISO)による設計・施工技術の規格制定に参画するなど、土木・建築基準及び認証制度の国際調和の推進に取り組んでいる。また、「土木・建築における国際標準対応省内委員会」において、我が国の技術的蓄積を国際標準に反映するための対応、国際標準の策定動向を考慮した国内の技術基準類の整備・改定等について検討を進めている。 (5)高度道路交通システム(ITS)の国際標準化  効率的なアプリケーション開発、国際貢献、国内の関連産業の発展等を図るため、ISOや国際電気通信連合(ITU)等の国際標準化機関におけるITS技術の国際標準化を推進している。  また、自動車基準調和世界フォーラム(UN/ECE/WP29)において、先進安全自動車(ASV)に係る国際基準の策定等を目指した活動を行っている。 (6)地理情報の国際標準化  国土地理院は、ISOの地理情報に関する専門委員会(ISO/TC211)に参画し、地理情報の国際標準化を推進するとともに、国際標準に準拠した国内標準を整備・普及している。 (7)技術者資格の海外との相互承認  APECエンジニア相互承認プロジェクトでは、参加国間における技術資格の相互承認に基づく有資格技術者の流動化を促進している。APECアーキテクトプロジェクト(建築家登録制度)では、建築設計資格者の流動化を促進するため、2008年(平成20年)7月にオーストラリアとの間で「APECアーキテクト日豪二国間相互承認取決め」を作成した。 (8)日本海呼称問題への対応  「日本海(Japan Sea)」の名称は、海上保安庁が刊行する海図や国土地理院が刊行する地図はもとより、国際水路機関(IHO)が刊行する海図作製のための指針に掲載され、国際的に確立された唯一の名称として認知されている。  しかし、1992年(平成4年)に開催された第6回国連地名標準化会議以降、韓国は、「日本海という名称は日本の植民地政策に基づくものであり、東海(East Sea)に改称するか日本海と併記すべき」との主張を繰り返している。国土交通省は、外務省等関係省庁と密接に連携し、国際社会に「日本海」への正しい理解と支持を求めていく。 (注1)車両並びに車両への取付け又は車両における使用が可能な装置及び部品に係る統一的な技術上の要件の採択並びにこれらの要件に基づいて行われる認定の相互承認のための条件に関する協定 (注2)車両並びに車両への取付け又は車両における使用が可能な装置及び部品に係る世界技術規則の作成に関する協定 (注3)海上における人命の安全のための国際条約 (注4)船舶による汚染の防止のための国際条約 (注5)船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約