第I部 まとめ
日本は今後本格的な人口減少・少子高齢化を迎える。そのような時代を“生きる”ということは、今までとは見える風景も違えば、使う筋肉も異なる。人々は、漠然とした不安を感じ、将来に対する悲観的な気持ちを高めている。
まず本白書では、人々を取り巻く様々な面で起こりつつある変化をみた。経済社会全体の趨勢が変化するとともに、それが個人の生活にも影響を及ぼしている。生活するフィールドである地域でも、それを支える装置に変質がみられる。個人も、意識や活動が変化するとともに、これまで生活を支えあう原点であった“家族”の構成が多様化していた。それらからみえてくるのは、厳しい財政状況の下、人口減少・少子高齢化が進むこれからの社会では、これまでのシステムが通用しないということである。
しかし他方で、人口の世代構成が変化し国民の行動の潮流が変われば、そこに新しいチャンスが生まれる可能性がある。身近な地域に新しい価値を発見したり創造したりする動きもある。人々も、地域が元気になるための活動に対する意識が強まっている。団塊の世代の就業意欲の高さなどを踏まえた新しいマンパワーの登場なども期待される。実際、事例でみたように、官と民が協働して暮らしを支える取組みや、地域の新たな魅力を発見するプラスαの取組みが始まっている。
国土交通行政は諸活動の基盤を支えてきたが、成熟社会に入りつつある今、起こっている変化をとらえ、何が求められているかを常に把握し、日々の生活をサポートしていく必要がある。厳しい財政状況にあるなか、国土交通行政は、選択と集中の下、インフラを活かして人々の暮らしをしっかりと下支えするとともに、人や地域がつながるぬくもりある社会の構築に向けて取り組み、子々孫々に国土と文化を守り伝えていく必要がある。
さらに、一方で新しい成長のエンジンを生み出すことも必要である。食料やエネルギーなど多くのものを世界市場から調達する日本にとって、グローバル化が進む世界においても、持続的に成長する力を備えていかなければならない。このためには、必要なインフラ基盤を整備・活用し、成長分野を伸ばしていくことが必要である。国土交通行政は持続的な成長を実現する取組みをしっかりサポートし、国のさらなる発展につなげて参りたい。