第4節 交通分野における安全対策の強化 

1 公共交通機関における安全管理体制の構築・改善

 平成17年上半期に公共交通機関において多発したヒューマンエラーに起因すると見られる事故・トラブルを受け、「運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律(運輸安全一括法)」に基づき、陸・海・空の運輸事業者に対し、「安全管理規程」の作成・届出、「安全統括管理者」の選任・届出等が義務付けられている。これにより、事業者が経営トップ主導により経営トップから現場までが一丸となった安全管理体制を構築し、国がその実施状況を「安全管理規程に係るガイドライン」に沿って確認する「運輸安全マネジメント評価」を行う運輸安全マネジメント制度が導入されている。この制度は、品質管理に関する国際規格であるISO9001等のマネジメントシステムで推奨される事項等を参考にしており、安全最優先の方針の下、経営トップ主導によって構築した安全管理体制を国が評価し、輸送の安全のための取組みをPDCAサイクルによって継続的に向上させるもので、従来からの保安監査と車の両輪になって実施することにより、公共交通機関のより一層の安全の確保を図ろうとするものである。20年9月から21年8月末までに、運輸安全マネジメント評価を延べ832社(鉄道177社、自動車151社、海運487社、航空17社)に対して実施した。
 
図表II-6-4-1 運輸安全マネジメント評価の実施イメージ

図表II-6-4-1 運輸安全マネジメント評価の実施イメージ

 21年度は、小規模事業者がより効果的に安全管理に取り組むことができるよう、小規模事業者向けのガイドラインを6月に策定するとともに、多くの事業者が取組み途上であるリスク管理の方法を示した「事故、ヒヤリ・ハット情報の収集・活用の進め方(自動車モード編、海運モード編)」を作成するなど、本制度の浸透・定着に向けた事業者支援を行った。また、制度導入後、これまでに実施した評価結果を総括したところ、事業者の運輸安全マネジメントに係る取組みは大きく変化し、社内における情報伝達やコミュニケーションの充実、事故やヒヤリ・ハット情報の収集・活用の促進、教育・訓練の充実などについて特に顕著な改善が見られ、本制度導入による効果が現れてきている。このような取組みを一層効果的なものとするため、メルマガ「運輸安全」のリニューアル、運輸安全取組事例サイトの開設、事故等の事例から得られる教訓集の作成等運輸安全情報発信の充実を図った。
 
図表II-6-4-2 大手事業者における運輸安全マネジメント制度の導入効果(平成18年10月〜平成21年9月)

図表II-6-4-2 大手事業者における運輸安全マネジメント制度の導入効果(平成18年10月〜平成21年9月)
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