第7節 地球環境の観測・監視・予測
1 地球環境の観測・監視
(1)気候変動の観測・監視
地球温暖化など地球環境問題への国際的な取組みが強化される中、気象庁では従前からの取組みに加え、平成20年に策定・公表された「今後の地球環境業務の重点施策」に則り、以下の施策を進めている。
温室効果ガスの状況を把握するため、大気中のCO2等を国内3箇所の観測所で、北西太平洋の洋上大気や表面海水中のCO2を海洋気象観測船で観測しているほか、平成21年度からは精密な日射・赤外放射の観測を国内5地点で開始した。
また、地球温暖化に伴う海面水位の上昇を把握する観測を行い、日本沿岸における長期的な海面水位変化傾向等の情報を発表している。
このほか、気候変動の監視及び季節予報の精度向上のため、(財)電力中央研究所と共同で、過去の全世界の大気状態を一貫した手法で解析する「長期再解析プロジェクト」を実施し、国内外の研究機関等に公開している。
図表II-7-7-1 二酸化炭素の日本における濃度の推移と地球上の濃度分布
なお、観測結果等を基に、「気候変動監視レポート」や「異常気象レポート」を取りまとめ、毎年の気候変動、異常気象、地球温暖化等の現状や変化の見通しについての見解を公表している。
(2)次期静止気象衛星整備に向けた取組み
次期静止気象衛星「ひまわり8号及び9号」は、台風や集中豪雨等に対する防災機能の向上に加え、地球温暖化を始めとする地球環境の監視機能を世界に先駆けて強化した「静止地球環境観測衛星」として整備することとし、8号を平成26年度に、9号を28年度にそれぞれ打ち上げる計画として、21年度より2機の製造に着手した。
(3)海洋の観測・監視
海洋は、温室効果ガスであるCO2を吸収したり、熱を貯えることによって、地球温暖化を緩やかにしている。また、海洋変動は、台風や異常気象等にも深く関わっており、地球環境問題への対応には、海洋の状況を的確に把握することが重要である。
地球全体の海洋変動を即時的に監視・把握するため、国土交通省は関係省庁等と連携して、世界気象機関(WMO)等による国際協力の下、海洋の内部を自動的に観測する装置(アルゴフロート)を全世界の海洋に展開するアルゴ計画を推進している。
気象庁では、観測船、アルゴフロート、衛星等による様々な観測データを収集・分析し、地球環境に関連した海洋変動の現状と今後の見通し等を総合的に診断する「海洋の健康診断表」を公表している。
海上保安庁は、アルゴフロートのデータを補完するため、伊豆諸島周辺海域の黒潮変動を海洋短波レーダーにより常時監視・把握するとともに、観測データを公表している。また、日本海洋データセンターとして、我が国の海洋調査機関により得られた海洋データを収集・管理し、関係機関及び一般国民へ提供している。
図表II-7-7-2 アルゴ計画の観測概要
図表II-7-7-3 気象庁ホームページで公開している「海洋の健康診断表」の例
(4)オゾン層の観測・監視
太陽からの有害な紫外線を吸収するオゾン層を保護するため、フロン等オゾン層破壊物質の生産、消費及び貿易が「モントリオール議定書」等によって国際的に規制されている。
気象庁では、オゾン、紫外線を観測した成果を毎年公表しており、紫外線による人体への悪影響を防止するため、紫外線の強さを分かりやすく数値化した指標(UVインデックス)を用いた紫外線情報を、毎日公表している。
(5)南極における定常観測の推進
国土地理院は、基準点測量、重力測量、GPS連続観測、露岩域変動測量、写真測量による地形図作成等を実施している。得られた成果は、南極地域における地球環境変動等の研究や測地・地理情報に関する国際的活動に寄与している。
気象庁は、昭和基地でオゾン、日射・放射量、地上、高層等の気象観測を継続して実施している。観測データは気候変動の研究や南極のオゾンホールの監視に寄与するなど国際的な施策策定のために有効活用されている。
海上保安庁は、海底地形調査を実施している。また、潮汐観測も実施し、地球温暖化と密接に関連している海面水位変動の監視に寄与している。