3 新しい成長モデルに向けて  ここまで、我が国で起こっている様々な変化に対し、今後の地域・社会で求められることをみてきた。最後に改めて強調されるべきは、人口減少・少子高齢化が進展し、財政状況も厳しい中、将来の憂いなく安心した生活のためには日本経済の成長が不可欠であり、国土交通行政全体が大胆なパラダイムシフトを求められているということである。  第1章でみたように、経済社会の趨勢に大きな変化が生じ経済が伸び悩んでいる中、限られたパイの分配に依存する従来のメカニズムでは成長を描くことが困難である。今後、パイを拡大させていくべく、特に、更なる発展が期待できるチャンスがある国際展開・官民連携、観光、航空、海洋、住宅・都市といった分野について、大胆な政策提案を行っていく必要がある。  このために、旧来メカニズムと決別し、新しい市場環境を構築していくことが求められる。  厳しい財政制約の中、「財政に頼らない成長」を大原則とした上で、限られた公共投資を費用対効果に応じて集中的に投資していくことが基本となる。これと併せて、成長の足枷となる規制を見直すことにより自由度を高め、新しい提案や大胆な経営を促し、地域や企業の創意工夫による成長を促進することが必要である。また、その際には、新たな時代にあったPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)手法に代表される、民間の知恵と資金の積極的な導入により効果的な公共投資を行うことが大切である。さらに、経済活動のグローバル化・国際展開に対応し、地域の自由かつ自主的な活動を支える人材の育成に官民が連携して積極的に取り組むことが重要である。  また、少子高齢化社会における経済成長の礎としての交通についても、移動の権利などの基本理念を定める法的枠組みの構築と関連施策の充実に取り組むことが必要である。  国土交通省は、このような取組みを通して、日本の経済全体の成長に大きく寄与していかなければならない。これまでの国土交通行政を、国民に夢を与え、日本を牽引する国土交通行政へと大胆に転換していくことが、今、求められている。